第18話 答えは出た
宿題も課題も卒業式も終わった。
宿題は先生たちを一番悩ませた。
なぜ二月になってまだ終わっていないのか。親を呼び出されたらしい。
両親は娘からは宿題なんて短い休みに出るはずがないと聞いていたという。その時点で宿題課題反省文と罪が深くなっていく。福子はキツイお仕置きが待っていることを知らずに宿題の処理を始めた。
「あのね。ちょっとはやっておきなさいよ」
「やる気がね。六日分産む前には気持ちがあったの。でもあれで全部無くなった。そうこの現世からうんこと宿題がきれいさっぱり」
「おい前田」
「なんだよ」
振り返って残念。担任の先生。
「なんだよ?」
「なんでしょう」
「中田帰っていいぞ」
多分、一番の苦行だ。
「え、その。中田さんは私担当で」
「俺たち大人も考えた。担当に甘えるのではなく、大人も介入した方がいいと。申しわけないが、前田はしばらく反省文と宿題と課題は職員室で取り組んでもらう。今回みたいに忘れていたのではなく、親には存在を隠した確信犯」
「いやです。私は中田の前でしか勉強しません。苦痛の中のオアシスに中田がいるんです」
「反省文二回分」
「分かりました」
「私、帰りますね」
「待って、待ってよ。私を置いていかないで」
「前田さん頑張ってくださいね」
私はすたすたと教室を出て行った。
果たして年度末までに宿題を終わらせることが出来るのだろうか。
全てが終わったという噂が流れてきたのは三月の最終週のことだった。登校日だったので、学校に行くと少しやせた福子が机にうつぶせになっていた。
「もういや、数字見たくない」
「アンタが宿題をためるからでしょ」
「鬼だよ。現国も数学も生物も嫌い。あぁ、神よ。なぜ私にこんな苦行を課すのですか。もう少し難易度下げてくれ」
「終わったなら良かったね」
「今日さ、一緒に帰ろ」
「答えが出たのね。小声だったら聞いてあげるわよ」
「嫌だ。ちゃんと言いたい。大切なことだから」
チャイムが鳴って、先生が教室に入ってきた。
「全員揃っているな。では小テストでもするか」
えー、とみんな言っているが小さい声で涙ながらに「もう嫌だ」と、声が聞こえた。全てサボりまくった福子が悪い。
「もう終わった。世界なんて滅亡すればいいんだ」
「小テスト如きで何をそんなに絶望しているのよ」
まだ寒いので、もこもこは外せない。
覚悟か。だから今日も薄着なのか。期間が短すぎたか。
年度末じゃなくて適当に梅雨とかにしておけば良かった。
「私、本気だよ。常葉の事、ちゃんと好きだよ」
大雪の日、私は自然とうちにおいでよ。
と、福子に言っていた。
「お邪魔しまーす」
「おばあちゃん以外誰もいないよ。ただいま」
「常葉。おかえり」
「おばあちゃん、お茶淹れて」
「はいはい、お友達?」
「そうだよ。あっついのお願いね」
「あらまぁ、こんなに濡れちゃってお風呂入っちゃいなさい」
「だって、福子。シャンプーの位置教えるね。てきとうにお父さんの服チョイスしておくから、大丈夫。なるべく臭くないやつ用意しておくからさ。お風呂場はこっちだからね。冷たいから湯船は無理だけど、シャワーでも十分でしょ」
「何言ってんだい。常葉もお友達と一緒に入るのよ。お友達でしょ? 済ましちゃいなさい」
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