第10話 文化祭にて

 十一月初旬、少し涼しくなった頃、文化祭がやってきた。

 ゴリラ担当で無ければ、フランクフルトやたこ焼きを食べながら回ることが出来ていた。

 候補の二人はやってきて早々、前田の可愛さに惚れっとしてしまい。えー、可愛い。と、私の前でいってのけた。


「君たち分かっていない。中田さんの方が可愛いでしょ?」

 こんな時に持ち上げなくていいから、さっさと行くぞ。


 今日のテーマはお淑やからしい。似合わないが、ゴリラ初見の男子はそれに気づかない。女子校という普段入らない非日常なのに可愛い女の子が一緒に回ってくれるなんて、それほど幸運なことは無いだろう。


「私、ヨーヨー釣りたい」


「いいね! 釣りに行こう!」

 事前に大人しくしていれば、向こうがお金だしてくれるよと言ったところ。こういうキャラでいてくれれば、中々上手いこといく。


 先ほどからケツに手が向こうとしているのが、気になる。


「かくなよ」


「え、かく?」

 真面目そうな中嶋君の耳には聞こえたらしい。


「あ、あの」

 戸惑う私にゴリラは「かさぶた出来ちゃってかかないように注意してくれたの」と、片目をつぶって見せた。イラっとした。


「向こうに人だかりが出来ているよ」

 向こうはダメだ。きっと宗さんの撮影会だ。


「お腹空いちゃった」


 ナイスゴリラ。


 嘘つけ、さっきからストラックアウトやスリーポイント大会に目が向いているの知っているぞ。でも、待てよ。今日の感じだとゴリラはあまり食わない。しめしめ、空腹で苦しむゴリラを見て楽しむか。


「はい、中田さん」

 席を取っておけと言ったので待っていたら、大量の焼きそばたこ焼きりんご飴。

 そうか全員分か。こんなに持ってくるなんてゴリラだもん。造作も無いよな。


「中田さんは本当によく食べるから、これでも足りないわよね」


「え、私こんなに食べないよ」


「男の子の前だからって、遠慮しなくてもいいわよ」

 こいつうらぎったな。


「俺たちもよく食うから食べられなくなったらこっちに寄越してよ」

 はかったのはいいが、ここからどうするゴリラ。


「中田さん、こんなにたくさんだとやっぱり大変だから、少し貰うね」

 あ、そうね。単独でいっぱい食べてたらお淑やかではないけど、私を盾にして食べたら目立たない上に、たくさん食べられるものね。


「結構、美味い。女子校パワーだよな」


「本当に美味しいよな」

 手料理として味わう男子高校生には悪いが足りなくなった食材はスーパーの惣菜コーナーからとってきている。おでんの中に高野豆腐が入っているのはそのせいだ。


 さて、ここで問題が発生する。けして、意図していなかった事案だ。少し暑いところが不幸の始まりだった。我々は別に間接キスくらい計算に入れていない。

 なので、の男子高校生は恥じらって、間接キスイベントが発生すると期待をしているところだろう。


 我々はそういう配慮はしない。このゴリラは三本飲みを得意としている。先日、不可能とされていた二本から更新したのだ。男子高校生は自分たちの分と私たちの分を買ってきていた。


「炭酸ってお茶と一緒に飲まないと上手く飲めなくて、少し貰うね」

 自然な流れで男子高校生からペットボトルを奪い自然に自分の分もキャップを開けた。

 男子高校生は少しトイレに行ってくる言い、二度と帰ってこなかった。


「なんでこうなっちゃうかな」

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