第18話 退役軍人達は戦い始める
私が機関銃に勝って喜んでいた時、その光景を見ていたアレックスの私兵達は次の行動を開始しようとしていました。
機関銃があった時は誤射による同士討ちを避ける為に建物の中に避難していましたが、私が機関銃を破壊したことによって、一部の私兵達が外に出て私達を殺そうと銃を構えながら出て来ました。
出て来た私兵達を斬り捨てようと刀を構えようとした時、端末に着信が来た事を知らせる振動が鳴りました。
こんな時に誰がと思って横目で確認をすると相手はファイターでした。
ファイターの方を見ると険しい顔で私のことを見ながらこっちへ来いと手招きのジェスチャーをしていました。
作戦を忘れかけたことに対する怒りでしょうか、険しい顔をしているファイターを見て、これはまずいと思い、能力を駆使してすぐに戻りました。
私を撃とうと駆けつけた私兵達は私が消えたのを見て警戒をしながら辺りを探していました。
ファイターは私が戻ってくるのを見て言いました。
「おい。そんな事はないと思うけどよ。作戦のことを忘れてないよな。機関銃に関しては私達ではどうしようもなかったから、斬るのはいいけどよ。そのままアンバーを放っておいて一人で暴れる気じゃないよな」
「アンタがアンバーの側に居ないと何か問題が起きてこっちが負けそうな時やアンバーの身に危険が迫った時にアンバーを逃すこと事ができないからな」
「まさかそんな重要なことを忘れて、機関銃を斬ったその興奮でそのまま他の連中も全員斬ってやろうなんて考えてないよな」
ファイターは私が作戦を忘れて、暴れ出そうとしているのではないかと心配している様でした。
事実私は、ファイターに止められなかったらそのまま出て来た私兵達を斬り捨てて、ファイターの陽動と撹乱の仕事を奪って次は施設の中に乗り込んで行ってしまったかもしれません。
「すみません。機関銃に勝った喜びのあまり我を失いかけてました。ファイターさん、止めてくれてありがとうございました」
「おう……。分かってるならいいよ。でもアンバーを連れている時に同じことをしないでくれよ。依頼人に死なれたら、私達が何の為に殴り込みに来たのか分からなくなっちまうからな。だから油断して死んじまうみたいなのは無しにしてくれよ」
「気の合う友人が減っちまうのは嫌だからな、事務所の職員も少ないんだ、二人だけで仕事を続けるような事になったら、手術を受けてない普通の人の所長も荒事の手伝いをする事になるかもしれないからな」
「そうですね。あの善人の所長に荒事をさせるのは申し訳ないですね。私達を拾ってくれた恩もありますからね」
ファイターと私が話している時、アンバーは気になる事があったのか、フレイムに質問していました。
「お会いした事はないですが、所長さんはかなり慕われているのですね」
「ええ。私達が終戦後やる事が無くて燻っていた時に誘われたので、感謝していますよ」
「皆さん兵士の頃からのお知り合いなんですか?」
「いえ違いますよ。私達は個別に誘われたので事務所で初めて会いました。なんだかんだで意気投合して一緒に事務所で働いている感じですね」
「じゃあ。あっちの話も終わったようですし、そろそろやりますか?」
「そうだな。じゃあ次は私がこの場を引っ掻き回すから、手薄になった隙にスピードとフレイムはアンバー達と一緒に建物の中に入っていってくれ」
「その後私は、あのデータにあった警備室に向かって破壊した後、執事のバトラーさんを助けにいけば良いんですね」
「私はアンバーさんとバレットを護衛しつつアレックスの元へ向かう」
「ああ、私とフレイムは役目が終わったらアレックスのいる部屋に向かい合流する」
「じゃあそう言う事でまずは私から行ってくるぜ」
そう言うとファイターは私達と別れて私兵達の撹乱に向かいました。
その後、私兵の悲鳴と衝撃音が響きましたがおそらくファイターの一撃でしょう。
ファイターは私兵の一人を倒した後、その死体を庭の中央に向かって投げ込みました。
投げ込まれた死体を見て、私兵達もファイターの存在も脅威として認め、ファイターを取り囲むように動き出しました。
「私が残っている私兵を斬り捨てますのでその隙に建物内に入って下さい。フレイムさんはすみませんがその間のアンバーさんの護衛をお願いします」
「良いですよ。私だと近づかないと能力を使えないですし、仮に使ったら目立ち過ぎるのでファイターさんの行動が無駄になってしまいますから」
「ではよろしくお願いします」
そう言って私は入り口前の警備が手薄になった所に斬り込みに行きました。
最初の一人は気付かれずに斬れましたが、斬った一人が倒れた後でバレてしまいましたが、銃を向けられる前に加速して斬りかかりました。
相手が銃口をこちらに向ける前に斬りつけるその動作を繰り返し続けました。
最後の方は同士討ちになる事を構わずに乱射されるようになりましたが、機関銃よりも少ない銃弾では私を止める事はできませんでした。
こうして、入り口前に居た私兵を全員斬った後、フレイム達を呼んで建物の中に入って行きました。
建物の中では最初に私が加速した状態で偵察をして、監視カメラの破壊と私兵の排除を行なっていました。
警備室が近づいて来たところでフレイムと別れました。
フレイムの能力なら庭のような広い空間ではなく建物内の方が相手に近づきやすく、能力が使いやすいと言う利点がありました。
それに警備室のセキュリティーがどんなに頑丈でも彼女の能力でドアを破壊して侵入する事や部屋の外から中にある私兵達を全員殺す事も可能なので、そこまで心配はしていませんでした。
私とアンバー、バレットの二名と一匹はアレックスがいると思われる部屋へと向かって行きました。
ここでも変わらず私が偵察と斬り込みをしながら進んで行きました。
その様にして進んでいくと私はそこで見知った顔に会いました。
その男は人が横並びで三人ほどが歩いてもぶつからない様な廊下の中央に8本の腕で腕組みをして私達を待ち構えていました。
私はこれは面倒だと考えていました。
アンバーを抱えて移動するとなると相手にバレない速度を出だす必要がでますが、その場合アンバーの体が耐えられないと言う問題があります。
それに戦うにしてもそこまで広くない廊下で戦うと言う事が問題でした。
8本腕の銃撃はかなりの場所をカバーできるでしょうから避けるのが難しくなってしまいます。
考えてみても彼と戦わないという選択肢は有りませんでした。
なので私は諦めて正面から戦う事にしました。
アンバーとバレットには待ってもらい、私は正面から8本腕の男に挑む事にしました。
8本腕の男は私の姿を見ると嬉しそうに話しかけて来ました。
「やっと来たな、そういえば俺も見たぜ、すごかったよあの機関銃の弾丸を避けて射手とその護衛を斬り捨てたところをよ。そんなアンタを俺の銃で蜂の巣に出来ると思うととってもワクワクしてるよ。アンタも機関銃の前に立った時もそんな感覚だったのか?」
「ええ多分同じ感覚だと思います。私もいつか乗り越えたいと思っていた物をあなた達のおかげで乗り越える事が出来ましたからね」
「そうか。でも今回はさっきとは違うぜ、機関銃の時は広い場所だったが、今回はこの廊下だ銃弾を避けれるのか?まあそれを狙ってここにいるんだけどよ」
「ところで一つ疑問なんだが、何で不意打ちで斬りかからなかったんだ?アンタのスピードならそれくらい出来るだろ?」
「それは、最初の一撃で殺せる自信が無かったからです。それに腕が生えてくる様な人間ですし、もしかしたら首も生えてくるのではないかと思ってやめておきました」
「そうかよ。この能力で良かったと今思ったよ。でも安心してくれ流石に首は生えてこねえよ。それ以前に自分の首を刎ねて試してみようなんて発想はねえよ。生えてこなかったら終わりじゃねえか」
そんな無駄話をしながら私達は銃と刀、お互い武器を構えました。
「じゃあ。はじめるか」
「ええ」
その言葉を最後に手術を受けた人間同士の戦いが始まりました。
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