第15話 退役軍人たちは証拠を見た
「すみません話が脱線し過ぎてしまいました。では、見つかったデータをみんなで見てみましょう」
そう言って端末を取り出してデータを見てみようとしましたが端末の画面には、データ読み込み中の文字とあと少しでバーが端に届きそうな映像しか写っていませんでした。
「すみません。今確認したのですが、まだ読み込みが終わっていませんでした。申し訳ありませんが、もう少し待っていてください」
「やっぱり。端末が古すぎんじゃないか。私みたいに力加減を間違えて壊しちまう様な事がないんだから新しいものに買い替えておけばよかったんだよ」
「そうは言いますが、新しいタイプの端末はかなり高いじゃないですか。それに端末は身分証の機能と電話さえできればいいじゃないですか」
私がいつまでも古い型の端末を使っているのには理由があります。
世知辛いですが、単純にお金が足りないからです。
この貧乏暮らしの中でわざわざ電話と身分証の機能ぐらいしか使わない端末を新しくしても特に意味がなかったのです。
そんな事に使うぐらいなら、生活の方にお金を回したいと言う考えで今まで使っていました。
それにアンバーの新型の端末を使わずに私の古い端末を使ったのにも理由があります。
それはあのチップに何か罠が仕掛けられていた場合の対策でした。
罠があっても私の端末ならまた買い直せばいいと思いましたし、スラム地区の端末屋では、物理的破損では補填がされづらいですが、機械側の故障であればほぼ交換してもらえるので私の財布は一切ダメージがないので別にいいかと考えていました。
仮にアンバーの端末で罠が作動して端末が壊れた場合、新しい端末をもらいに行く際に襲撃をされてしまうのは厄介だと考えていました。
罠に関してもあった場合は、情報屋の元はもう一度行って今度は解析をお願いする予定でした。
そうして待っていると端末の解析が終わりました。
「お待たせしました。今解析が終わりました。データを見てみましょう」
そう言って私は、端末の画面設定を変更して立体で映る様に変更しました。
データを開いた結果、出て来たのはここ最近の出来事についてというフォルダでした。
「アンバーさん最近の出来事とありますが何か心当たりはありますか?」
「父が亡くなる数ヶ月前から何かを警戒している様でボディーガードや屋敷の警備を強化していました。多分その警戒をする事になった原因のことだと思います」
「では開いてみましょう」
フォルダを開いてみると、日付別での起こった事故に関する写真と事故についての詳しいレポートが書かれていました。
また、レポートの最後には事故を起こしたと考えられる人物の情報とその時のアリバイがまとめてありました。
最初の事故には、犯人と思われる人が数人いましたが、日付が進んでいく毎に人数は減っていきました。
最後の日付には、一人の名前と事故を起こすに至った理由が書かれていました。
その人物は、金で人を雇って事故を起こしてアンバーとその両親を亡き者として、会社を乗っ取ろうとしているとのことでした。
その名はアレックス・アトラス。
アンバーの叔父に当たる人物です。
「このデータを見る限り、アレックスという人がアンバーさんのご両親が亡くなった事故を起こした犯人の様ですね。情報屋が言っていた人物ですね」
「アレックス・アトラス。その人に私の両親が殺されたんですね。そして私の命も狙っている」
「その様ですね。では犯人の名前と住んでいる場所がわかったところで、襲撃の予定を立てていきましょう」
「待ってください!」
「襲撃をしようという事になっていますが五人で襲撃をして勝てるものなんですか?」
どうやらアンバーは私達がすぐ襲撃をしようとする事に不満がある様でした。
もしかしたら、私達のことをすぐに襲撃をしようとする野蛮人なのではないかと疑っているのかもしれません。
実際私は面倒事がないなら力で解決すれば楽でいいと思っていますが、今回の場合は襲撃をした方がいい理由もあるのです。
「アンバーさん。安心してください。私達は別に無責任に襲撃することばかり考えている訳ではありません」
「私達は改造を受けているので、まず改造を受けていない人が数十人相手でも基本は負けることがありません」
「向こうにいる改造を受けた人は分かっているだけで8本腕の男一人。おそらく他にもいるかもしれませんが、居ても一人か二人ぐらいです」
「殺しや誘拐などの非合法な仕事をしている様ですし、メンテナンスもおそらく正規ではないでしょう。そうなると維持費がかなり高くつくので大勢はいないはずです」
「それに襲撃を提案している理由は、そうしないと私達が負けてしまうからです」
「待っていても状況は変わりませんし、むしろアレックス側から刺客を送られ続けるので、いずれこちらが疲弊して負けてしまいます」
「8本腕の男は別れる際。私とファイターに待っていると言いました。おそらくこちらが事故の犯人が誰か気付くことを知っていたのでしょう」
「ですが私はこれをチャンスだと思っています。相手が待ち構えているならそれを一網打尽にすれば良い。襲撃犯の中には改造を受けた人は一人しかいませんでした。何人もいるなら襲撃に来ればよかったのにいないという事は改造を受けた人は少数だという事です。アトラスを守るために少しいるのかもしれませんが」
「分かりました。襲撃しか手段がないのですね」
「理解して頂けて良かったです」
「では、襲撃の流れについて話し合って行きましょう」
私達の収入とアンバーの敵討ちのための襲撃の手順決めが始まりました。
「まず初めにアトラス邸で暴れる理由ですが、アンバーさんの両親が亡くなった事故を起こしたのがアトラス・アンバーである証拠をアンバーさんが探偵事務所の社員である私達と共に持って来た際、それを見て激昂して襲いかかって来たアトラス一味とアンバーさんを守るために私達が戦ったという筋書きにしたいと思っています」
「襲撃をして、アトラスに罪を認めさせた後、仇討ちではダメなのですか?」
「そうしてしまうとアンバーさんの今後に問題が出て来てしまいます。大義名分の無いまま殺してしまえば、不都合な奴を殺す人だと思われてしまいます。それはまずいです。あくまでもこちらが正しいという程を持っていなくては」
「私達の役割ですが、私はアンバーさんの護衛をしつつアレックスの元は向かいます。ファイターさんは遊撃と相手の撹拌をフレイムさんは警備施設の破壊と捕えられているであろう執事のバトラーさんの保護をお願いします。多分監視をされているはずなのでそこを調べれば分かるはずです」
「おう。私は好きに暴れれば良いんだな。それは楽で良いな暴れまくってあいつらの目を惹きつけてやるよ」
「では、私はファイターさんが暴れている間に警備施設を破壊して監視カメラを止めれば良いんですね。そのあとは捕まっているバトラーさんを見つけてアンバーさんの所に行けば良いのでしょうか?」
「ええ。それで大丈夫です。バトラーさんも知らない人に助けに来たと言われても不安でしょうし、アンバーさんにあわせてあげれば私達のことを信用してくれるはずです」
話が進んでいく中、ファイターが質問をした。
「ところで、改造された人間の扱いはどうする。遺体を施設に持ち込めば、報酬が出るが倒した奴がもらうか誰が倒しても3等分でやるのか?」
基本的に改造された人の遺体は研究所が預かる事になっていました。
そのため、私達は死んで葬儀が行われる事になっても棺桶の中に入れられる事はありません。
なんでも研究所では、能力のデータやその人の体の中で機能がどの様に進化したのかを調べている様です。
そのため、遺体を渡す際に報酬が支払われる様になっていました。
「そうですね。私は3等分で良いと思います。欲を出して死んでしまうよりは何かあったらお互いに援護ができる様にしておきたいです」
「私も3等分が良いです。やっぱり命の方が大事なので」
「OK。じゃあ三等分で、お互い危なくなったら助け合っていこうぜ」
「やる事は決まりました。では、アレックス邸への殴り込みに行きましょう」
こうして、ライダースーツ姿の男と短パンの女と耐火服を着た女、目元を隠した少女、真っ黒な毛並みの犬という不思議なメンツでの殴り込みが決行される事になりました。
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