第11話 退役軍人は証拠を探しにいく その2

 警報が鳴り響く中、アンバーとバレットが慌てて18号室から出てきました。


「スピードさん。一体何があったんですか?」


「私にも今この警報がなったばかりなので、なんとも言えません。アンバーさんとバレットはとりあえずこの部屋の中に隠れていて下さい。何かあればこちらから連絡しますので」


 そう言ってアンバー達に部屋の中に入ってもらったあと、さらに放送が聞こえてきました。


『不審者が侵入しました。利用者の皆様は部屋の中に入って鍵をおかけになってお待ちください。すぐに警備が到着し、問題を解決します』


 この放送が聞こえている間、かすかにですが銃声の様な音が聞こえていました。


「どうする?私達もやっぱりアンバー達と一緒に部屋で待機しておくか?」


「それは最後の手段にしましょう。もし狙いがアンバーさんだった場合。あの部屋で戦わなければならなくなります。爆弾を投げ込まれたらそこでおしまいです」


「それにアンバーさんのご両親の遺体がある場所で戦うというのはアンバーさんが可哀想です」


「何よりこっちの通路などの広い場所で戦う方が私達の能力を活かせると思います」


「そうだな。スピードも動き回りやすいだろうし、私もここら辺にある調度品を投げれば大抵のやつなら倒せるしな」


「まあ。どうしようもなくなったらアンバーさんのたちと一緒にあの部屋に篭って助けが来るのを待ちましょう」


 お互いに納得した後、私達は2人で受付の方へ向かって行きました。


 向かう際には私が先頭で能力を使って見つからない速さで偵察を行った後、ファイターが後を続いて行きます。


 前に敵がいた際は、私が撹乱し、そこをファイターが援護をし、後ろから敵が来た時はファイターが敵を惹きつけている間に私が援護に入るという形でした。


 2人で警戒しながら歩いていくと、銃声が聞こえてきました。


 音がした方を確認すると三人組の顔全体を覆ったマスクの男達がいました。


 どうやら彼らは、監視カメラを破壊しながら移動をしている様で見える監視カメラは全て破壊されている様でした。


 カメラを破壊しながら、通信用のインコムで話しているのをみたことから、誰か指示をしている人間がいることは確実でした。


 私達は声を落として、話し合いました。


「どうする。とりあえず片っ端から気絶させていくか?殺してしまったら、この後警察か軍がきた時に面倒な事になると思うしよ」


「そうですね。ここはスラムとは違うので殺してしまったら、取り調べを受けたりで余計な時間がかかってしまいます。それに私達でこの問題を解決すれば、私達の事務所の知名度も上がるかもしれません」


「じゃあ。片っ端からやっていこうぜ。事務所が有名になれば仕事も増えるかもしれないからな」


 私は早速、三人組の一人に殴りかかりました。


 倒れた仲間とそこに急に現れた私をみて、残りの二人が銃を私に向けてきましたが、そのタイミングでファイターが廊下にあった植木鉢をその筋力を使って投げつけました。


 その植木鉢をお腹で受け止めてしまった人は吹っ飛んで壁にぶつかって動かなくまりました。


 私は急いでもう一人を殴り倒した後、急いで吹っ飛んだ人の呼吸を確認しに行きました。


「よかった。息はあります。」


「危なかったぜ。ここで殺してたら問題になるところだったからな」


「そう思っているなら加減をして下さい」


「そうするよ。投げる場合は加減が難しいからな。次はもうちょっと抑えて投げるよ」


 そんなやりとりの後も何度かマスクをつけた犯人達に見かける事がありましたが、その時は問題なく気絶させる事ができました。


 その途中で私達は、犯人達が持っていたナイフを何本かもらっていました。


 流石に相手の装備の質が上がってきた場合、こちらもいつまでも素手で戦うわけにはいかなかったからです。


 犯人達を気絶させながら、私達が最初に入ってきた受付へと向かっていました。


 受付の方にはマスクの犯人達が集まっていました。


 その中に一人異常な姿をした人がいました。


 なぜか一人だけ上半身が裸だったのですが、異常なのはそこではありませんでした。


 腕が左右4本ずつ生えていたからです。


 その男は三対の手には銃を持ち、残りの一対の手には何も持っていませんでしたが、おそらくそれは、腰に刺してあるナイフを抜くためだと思います。


「おい。あんな奴とまともな武器無しでどうやって殺さない様に戦うんだ。流石にあの数の銃で撃たれたら私もひとたまりもないぞ」


「そうですよね。まあ私達は、応援が来るまでの時間を稼げばいいので、ファイターさんは何か物を投げた後はすぐに離れて下さい。あとは時間まで私が撹乱して、どうしようもなくなったら。逃げ回る事にします」


 私達は同じ改造を受けた人間と戦う事にしました。

 

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