第10話 退役軍人は証拠を探しにいく

 私は情報屋に教えられた情報を頼りに事務所に止めてある車を運転して、新都中央保管所へ向かっていました。


 同乗者は、依頼人のアンバーとそのペットのバレット、同じ事務所のメンバーであるファイターの3人でした。


 もう一人のメンバーのフレイムは、向かう先の新都中央保管所で戦闘があった場合、彼女の能力では施設が炎上してしまう危険性があったので留守番をしてもらう事になりました。


「そういえば、スピードさんは新都中央保管所に入るときは、刀を持って行くんですか?」


「いえ。流石に刀を持って施設に入ることはできないので、素手で行く事になりますね。でも安心して下さいゴーグルの持ち込みは可能なので、相手が銃を持っていても私は銃弾をよりも早く動くことができます」


「それに、今回は私もいるぜ。もし襲ってくる奴がいれば一発お見舞いしてやるよ。それに私は、落ちてる物を投げるだけでも十分に戦えるからな」


『アンバー。私もいるぞ。いざという時には囮ぐらいにならなれるからな』


「皆さん。ありがとうございます。もしもの時はよろしくお願いしますね」


「ええ。頑張りますよ。私達の方もアンバーさんの視覚には期待しています。何か手掛かりが見つかるといいですね」


 そんなふうに話しながら運転をしていると目的地である、新都中央保管所に到着しました。


 私はスラム地区や市民地区の保管所に行ったことはありましたが、富裕地区の保管所に行ったことがなかったので驚きました。


 お金持ちの遺体を大量に保管してあるだけあって、かなり大きな建物でした。


 自動ドアを入ってすぐの所に受付があったので、アンバーが対応に向かって行きました。


「アンバー・アトラスです。両親に会いにきました」


 そう言った後、アンバーは自分の端末を見せて自分の身分を証明しました。


「アンバー・アトラス様ですね。かしこまりました。では、18号室にてお待ちください。こちらが18号室のカードキーです。どうぞ」


 アンバーがカードキーを受け取った後、私たちは18号室へと向かいました。


 18号室の扉は分厚そうでその中でした話は聞こえることはなさそうでした。


 アンバーがカードキーを差し込んだ後、私たちは部屋の中へ入って行きました。


 18号室は思ったよりも広い部屋で私達の他にも後20人ぐらいが入ってもゆとりがある様な大きな部屋で中央に黒い高級そうな蓋のない棺桶が二つ台の上に置かれていました。


 また天井の四方には監視カメラが設置されており、その室内で何か問題を起こせば、すぐに管理者側に伝わり、警備が到着する仕組みの様でした。


 アンバーが両親の元へ駆け寄っていく後から私達もついて行きました。


 アンバーは両親の遺体を見て泣いている様でしたが、ある事に疑問を持ったのか、質問をしてきました。


「両親の遺体は車の事故と聞いていたでかなり損傷があると持っていたのですが、どこにも傷がありません。もしかして犯人が証拠を隠すために別人にすり替えたなんてことは?」


「いえ。流石にそこまではされないと思いますよ。それにもし別人だったら整形の後などでこの保管所の職員達が気づかないはずはありません」


「傷がないのはここの保管所の職員が行った処置のおかげだと思いますよ。しかし、この処置はすごいですね。傷跡が全然見当たりませんよ。それにドライアイス無しでの保存というのもすごい。私達がいるスラムでの保管所とは大違いです」


「処置が本当にされているのか気になるのでしたら、アンバーさん。証拠品の有無を調べるついでにあなたのその視界で調べてみてはいかがですか?」


「そうですねでは、やってみます」


 そう言ってアンバーは、両親の遺体の方を向いて集中しました。


 私達はやることがなかったので、この部屋の調度品などをみて、スラムの保管所との違いについて話していました。


「父の着けているネックレスの中に空洞があって、小さな物が入っています」


 私達は、アンバーの報告を聞いて集まりました。


「皆さん。どうやってネックレスの中にある物を取り出しましょうか?」


「監視カメラもついていますし、正規の手続きでこのネックレスをもらう場合、時間がかかりすぎてしまいます」


「それなら安心してください。私の能力を使えばそんな問題は解決できます」


「私ならちょっと席を外すふりをして、室内のカメラから外れた後、高速で移動してそのネックレスを持ち出した後、中身だけを取り出して、もう一度戻ってネックレスを返せばいいのです。皆さんにはちょっと遺体の周りでネックレスが見えない様にしていただければ、問題はありません」


「皆さんさえ良ければ、私はこの方法をやろうと思っているですが、いいですか?」


「私はスピードさんが良ければそれでお願いします」


「私もそれでいいぜ。スピードが速いのは知っているからな、ただ間違って誰かにぶつかるとかいうのは無しにしてくれよ」


『私も何もできることがないので、問題を解決できるのならどんな方法でもいい』


「では。全員に賛成してもらえたのでこれから初めて行きましょう」


 私達は作戦決行に移しました。


 アンバー達は遺体の頭の方に集まり、最期を惜しんでいる様にしている間に、私は18号室の扉を出て、監視カメラの視界から外れた後。


 私はゴーグルを着けて、自分の能力を発動させて加速をした状態でもう一度18号室の中に入りネックレスを外し持ち出しました。


 アンバーに事前に教えてもらった方法でネックレスの中身を調べました。


 中には小さなカード状の記憶媒体が入っていました。


 私はそれを回収して、私の端末に入れて読み込ませてみました。


 思ったよりも容量が多く時間がかかりそうだったので、先にネックレスを返して合流する事にしました。


 帰りの際も特に問題なくネックレスをつけて脱出することができました。


 最後に、カードキーを使って18号室に入りました。


「成功しました。中身は記憶媒体でした。今私の端末でデータの読み込みをしています」


「事務所に戻る頃にはデータの読み込みが終わっているでしょうし、もう戻りますか?」


「すみません最後に一人だけにしてもらえませんか?」


「ええ。いいですよ。では、私達は部屋の外で待っていますね」


 私はアンバーさんも両親への別れをしているのだろうと思い、それが終わるまでのんびりと待とうと考えていました。


 そうしていたら突然警報が鳴り響きました。

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