第6話 退役軍人は少女に質問する
身体を機銃掃射で蜂の巣にされると言う最悪の夢から覚めた私はゆっくりと身体を起こし、顔を洗って歯を磨くなどの身だしなみを整えた後、隣りの部屋である事務所のオフィスに向かいました。
オフィスには、誰もいませんでしたが、テーブルには重しがわりにペン立てが置かれているメモが置いてありました。
メモには、事務所のメンバーであるファイターが書いたと思われる、荒っぽい字で書かれていました。
「アンバーの服とブラッドに必要なものを買ってくる。ついでに食べ物を買ってくるけど、文句を言うなよ」
このメモを読みながら私は、昨日の夜にあったことを思い出していました。
アンバーに依頼をしないかと言った後、依頼について詳しく書こうと考えていましたが、アンバーが少しふらついていたりと疲れていた様子だったので、依頼については明日話し合いをしようと言うことで、今日は事務所に泊まってもらうことにしたのでした。
その際、アンバーの服装があまりにも高価すぎるので、人目につきすぎるので、何か移動しやすい服を買いに行った方がいいと言ったこと。
また、バレットの首輪が目立たず、リードに繋がれていないので、野良犬と勘違いされて、連れ去られてしまう可能性があるため、何か飼われていることが分かるようなものを買おうと言う話をした。
そんなことを思い出しながら、これからどうしていくべきかと考えていました。
「ただいま」
ファイター達が帰ってきました。
ファイターは全員分の食事だと思われるいい匂いがする袋を持っていました。
アンバーは昨日話していたように、今までの高い服から市民層の地域に行っても問題が無さそうな服に着替えていました。
「どうですか?このような服は着たことがないのでよくわからないのですが、似合っているでしょうか?」
アンバーの質問に私は正直に答えました。
「似合っていますよ。それに何かあった時に走ることができると言うことはとても良いことですからね」
私としては似合っていて実用性のあるいい服だと言う意味であったのですが、周りからはとても不服だったようで、アンバー以外に非難されました。
『実用性も大事だが、服の色がアンバーの髪に合っていていいなどの言葉も必要だろう』
「人間よりも犬の方が人間のファッションに詳しいなんてことがあるんだな」
「喋る犬すごいですねえ」
バレットは私の発言の足りなさについての注意をし、ファイターとフレイムは私の犬以下のデリカシーについて非難をするような目で見てきていました。
「待ってください、流石にスラム出身の人間に対して女性へのモラルの褒め言葉を期待されても困ります」
私は周りの非難に耐え切れず抗議をしましたが、聞き入れてはもらえませんでした。
「そう言えば、アンバーさんに聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
私はこの空気から逃げる為にも、依頼人になるかもしれないアンバーを見ていて思った違和感について聞いてみることにした。
「アンバーさんは、何か五感の拡張系の改造か超能力で視覚を補っているんですか?」
「会った時から目を開けているところをほとんど見た事がないのに物を渡す時落としてしまうような事、人と話す際に見当違いの方を見ているという事もありませんでした」
アンバーはその質問に対して、少し考えた後、答え始めた。
「言うのが遅れていました。私は病気で視力を失ってしましましたが、目を閉じていても物を見ることができる超能力と音の反響を利用して空間を把握することができるようになる改造を受けました」
アンバーの答えを聞いて私は超能力があるのに改造をするなんて珍しいなと考えていました。
超能力はある日突然使えるようになったと言う人が、出てくるようになったのです。はじめはスラム出身の人が多かったので、麻薬や市民層や富裕層の地区から流れてきた薬品の実験ではないかと言う噂が出てきてスラムが険悪な雰囲気になってきていました。
しかし、その険悪な雰囲気も市民層や富裕層の地区からも超能力者が出てきたことで変わりました。
一部の能力者の協力によって、研究を行うことができるようになり。
超能力の操作法や制御の仕方、改造技術への応用など様々な技術が開発されました。
そんな中一つの法則がわかりました。
超能力を持っている人間は、その超能力とは違うタイプの改造を行うことができないと言う物でした。
改造手術を行う前に、与える機能について相性を確かめるのですが、超能力者の場合は同じタイプの能力以外は拒絶されているようだったのです。
その為、超能力者は改造手術を受けても似たような能力しか、身につかない為、手術を希望する人はほとんどいませんでした。
まあ、他にも軍に関係なく一般で改造手術を受ける場合は手術費用がかなり高額になると言う理由もありました。
そのことを考えている時に私にある考えが浮かびました。
「アンバーさんの目が見えないのでしたら、いっそバレットも盲導犬ということにしてはどうでしょうか?」
私の発言を聞いてアンバーとバレットは不思議そうな顔をしていましたが、バレットが不満そうに私に質問をしてきました。
『待ってくれ、なんで私が盲導犬のフリをしないといけないんだ。今まで通りにアンバーの横を歩くのではダメなのか?』
「アンバーさんの横を歩くだけでは、攫われてしまう可能性もあります。あなたは不死身かもしれませんが、治るまでの間は無防備なんですから」
「それに、盲導犬のフリをしていればいいこともあります。ペットが入らないような場所にも入り込めるという点です。それに普通の人は盲導犬を見てもそれが本物かどうかなんて気にしません」
「アンバーさんも目が見えないフリをしておけば、相手を油断させることもできます。外に出る際には私たちのうち一人は護衛につきますので、襲われる心配はたぶんないでしょう」
食事を終えて、落ち着いた後、私は重要なことについて話をしました。
「アンバーさん依頼の内容について話していただけないでしょうか?」
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