第5話 退役軍人は夢をみた
私、スピードはいつもの夢を見ていましたそれは、私が早く動けるようになる前で、スピードと名乗る前の夢でした。
そこは火薬や血人の死体の匂いなどが混じって酷い匂いのする場所でした。
その場所は私が兵士として参加していた戦場でした。
私はその戦場で歩兵の1人として参加していました。
参加した理由はこの国の為に戦いたいとか、大切な家族の為にと言う様な大層な理由ではなく、単に兵士の方が食事が付いていて給料が普通に働くよりも高いからと言う理由でした。
しかしその職場も、私の様な失う物がほとんどないスラム街出身にとっては給料が高いだけで他の人たちにとっては、市民層では、食うに困りどうしようもなくなった際に行くところ。
さらに富裕層にとっては、どうしようもないボンクラを何かと理由をつけて送り出して戦場で死んでもらうという合法的な処分場となっていました。
私は、この話を上官から聞かされた時、上の人たちとの差があり過ぎることに困惑していました。
私のようなスラム出身の兵士には入隊の際にある契約書を書かされていました。
それは、兵士としてのあり方などとは別で重傷をあった際の新技術の医療の使用に関する物でした。
その契約書を書く際に説明をしていた白衣を着た医者らしき男が言うには、
「これは、革命的な技術とを用いたもので、手や脚を失ってしまっても、新しい手脚や今までの手脚よりもさらに高い性能にする技術。さらには本来人間にはない機能をつけて、新しい兵士になってもらうための契約書だよ」
白衣の男はとても素晴らしいことのように語っていた。
「それにこの契約書にサインをすれば基本給も上がるし、手術後に兵士を辞めても定期的にメンテナンスを受けにきてくれるなら、メンテナンス代は無料で身につけた機能のデータをくれるのでしたらさらに謝礼もお支払いします」
その言葉を聞いて私は、迷わず契約書にサインをしました。
スラム出身の私では、怪我で手脚を失った場合、義手や義足を買うことも大変でしたしその後の生活のことを考えるとどうしようもなくなってしまうためでした。
また、怪我をした際、新しい手脚を無料でつけてくれることや面倒なメンテナンス料を払わなくても済むこと、給料が上がることに大きな魅力を感じていました。
この契約書にサインをしたしばらく後戦場で私は大怪我を負って、契約に従って現在の高速移動が可能な身体に作り替えられました。
幸いなことに骨格の強化や筋肉の移植など外見から機械が入っていると思われないような改造でついでに身体が頑丈になったので多少のことでは、怪我をしないようになりました。
残念なところは、身体の改造はできましたが、眼球に関しては頑丈にする事が出来ず、全力で走る際には研究所制作の特製ゴーグルがないと走れない事と乗り物の速度に物足りなさを覚えてしまうようになってしまった事です。
そしてこの夢の中で色々考えていましたが、とても嫌な事が一つありました。
それは目が覚める時はいつも機銃掃射によって私の体が穴だらけにされる衝撃で目が覚めるからです。
いくら私が、新しく生まれ変わった時の思い出だからと言っても毎回こんな目に遭うのは理不尽ではないかと考える事があります。
そんな事を考えている間に上官からの突撃命令が下されました。
私はそんな命令を聞いて、どうか今回はあまり痛くないところでこの夢が覚めてほしいと考えながら準備をして行きます。
「歩兵隊突撃!」
今回はこの突撃が成功しますようにと考えながら、内心はまだ穴だらけになるのだろうと諦めつつ、私は部隊の皆と一緒に突撃して行きました。
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