第10話 外の住人
縞の数が、久々に1256本になった。ふと思った、何の数だろうって。子供の頃に、同じ数字を聞いた気がする。子供の頃?天井の縞模様の数?縞模様?洋室の天井が縞?
私はなぜ、カールからも電話をいつも待っているのだろう。自分からかければいい。相手は、カールじゃなくてもいいじゃないか。スマホをとった。アドレス帳を探す。見当たらない。
おかしい。これはおかしい。家族みんな携帯だ。それすら探せない。どういうことだろう。
チイ?チイって誰だっけ。私は、誰に会いたいのだ。
スマホが鳴った。カールからだ。いつもの調子で話しかけてくる。でも、今日は話の中身が頭に入ってこない。この人は、何を言っているのだろう。
「すみません。あなた誰ですか?」
思わず口に出た。電話の向こうでカールの声が止まった。
コンコン。ドアをノックする音がする。
「君も巻き込まれ?」
ドアの外には、男の人が立っていた。知らない。えらく年配だ。
「あなたもそうですか?」
そうだ、私は不思議な家に取り込まれたのだ。
「うん?僕はどちらかというと自分で入ってきた。でも、いつでも出れる様に片足は、物語の外に置いてる。」
ここから出れる方法があるの?
「外の世界の大切なものを常に忘れない様にする。それだけさ。大切なものじゃなくてもいいけど。」
それだけ?
「そう、それだけ。」
私は、今しゃべってるの?
「この物語の中で今君はしゃべってない。物語の外で僕が、君がしゃべってることを聞いてる。この物語の中では、君の考えていることを読み取ってる。」
わけわかんないな。
「そうだね、理解する必要はないよ。ところで君は、どこから乗ったの?」
鹿児島。そこからこの不思議な家に入って、カリフォルニアで一旦抜けたんです。でも、また取り込まれてしまって。
「すごいな。僕が知るなかで、最長記録だ。」
「お名前は?」
「加藤隆志。ぼくは、もうすぐこの物語から弾かれる。だから名乗っても意味ないけどね。ただこれだけは忘れないで、元の世界には、君の居場所が必ずあるってことを。」
そういって、彼は部屋から出ていった。
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