第5話 帰国


「で、どうしたい?」どうしたい?

「ゆきちゃんは、日本に帰ることもできるし、このままアメリカにとどまることも可能。もしお望みなら、不思議な家に帰ることもまだできるわ。」

不思議な家に?

「不思議な家に帰るんですか?それはないですよ。」

「そう。でも、結構多いのよ。一旦外に出た後、またあの場所に戻ろうとする人。繋がりが、切れちゃうと、ほとんどの人は入り口さえ見つけられないけど。」

そうなのか。

「でも、あそこでの思い出というか、記憶がほとんどないですし。帰ったところで。」

「そう。まあ、その方がいいかも。」

「日本に帰ります。このままアメリカで暮らしていけるスキルはなさそうだし。」

「そお、大体のことは勢いで何とかなるわよ。」

佐久間さんは笑いながら言った。

「じゃあ、まずはパスポートの再発行ね。その辺の手続きは、私がしたげる。不思議な家を経由して、入国したみたいだから、多分、すぐに発行されるわ。それから、帰りの足の手配。船と飛行機どっちにする?」

船?

「飛行機でいいですよ。船だと時間がかかりすぎるし。でも、私今お金ないんです。」

「気にしなくていいわよ。貸したげるから。」

日本に帰ってもすぐには返せないかも。

「でも。」

「いいって、こう見えて、結構お金持ちだから。お返しはゆっくりでいいわ。」

ニッと笑って言った。

「じゃあ、その辺の手続きに行こう。ゆきちゃんも支度して。」

したくって言っても、何も持ってない。

「佐久間さん、ちょっと化粧水貸してください。」


洗面所に入った。

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