第2話 パシア ホテル

「すご!」

カードを頼りに。精一杯の英語能力を駆使し、ホテルにたどり着いた。まあ、親切そうな人をみつけて、カードを指差しながら「ヒアーヒアー」って言ってただけだけど。意外にそれでなんとかなるんだから。世の中はだいたい勢いで生きていける。だいたい、なんで日本人がいなんだ。

さて、私は、今目的のホテルのまえで立ちすくんでいる。でかい。高い。ここからどうすりゃいいの。とりあえずフロントに行こう。勇気を持って足を踏み出す。

「ゆきこさん。探しましたよ。」

男の声で声をかけられた。顔ちっさ!足なが!背ぇ高!しかも金髪欧米顔。流暢な日本語と不釣り合いなほどのモデル型外国人だ。でも、こんな美形の知り合いはいない。

「どちらさまですか?」

うわずった声で答えた。近くに寄られると美形と高さの圧が半端じゃない。

「え、ゆきこさんですよね。」

男が、尋ねる。

「そうですけど。」

どうしよう。

「人違いよ。カール。」

男の後ろで、女の人の声がした。佐久間さんだ。カールと呼ばれた男が振り向く。

「おー、ゆりさん。そうなんですか。」

「そんなとこで、油売ってるとBOSSに怒られるわよ。さっき探してたわ。」

「ほんとですか?BOSSは、なんて?」

「さあ、例の件じゃないの。」

「ああ、あの件ですか。参りましたね。何にもしてないです。」

「じゃあ、せめて言い訳ぐらいしてきなさい。」

「わかりました。」

男が足早に立ち去る。ホテルの玄関からでていく彼を見ながら佐久間さんが言う。

「気にしないで、可愛い日本人の女の子は、みんなユキコさんなんだから。」

何だそれ。ナンパか何かだったのか。そんなら惜しいことしたかも。

「じゃあ、私の部屋に行きましょう。」

そう言って、いつのまにか手に入れたのか、ルームキーをくるくると回しながら言った。

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