第49話 結果
最後の試合は、全観衆がその試合だけを見つめていた。その試合が映し出されたスクリーンだけに、すべての会場の視線が注がれていた。
熱気と熱狂が僕の心臓にまで届いた。画面上の戦況に応じて応援や歓声もヒートアップし、会場は興奮の坩堝に包まれていた。
派手なプレイだけじゃなくて、小さなスーパープレイにも感嘆の声が出ることが嬉しかった。そのゲームをプレイしている人が多いからこその盛り上がり方だった。
そんな中でプレイをするのは緊張した。だけれど……とても楽しかった。手が震えるほどの緊張感というのは久しぶりに感じた。
座っているのに、宙に浮いている感覚だった。足が地面についているのにフワフワしていた。このまま昇天してしまうのではないかというくらい緊張した。
それでも……楽しかったと言い切れる。最大規模の大会の決勝戦を戦ったという経験は、一生忘れることがないと思う。
そして……
楽しい時間というのはあっという間に過ぎ去っていくものだ。後悔したって取り戻せないかけがえのない時間。あの時こうしていればよかったとか、もっとやることがあったとか、他に選択肢があったとか……走馬灯みたいにいろいろな感情が僕の胸に溢れかえっていた。
準優勝ってのは胸を晴れる成果だと思う。この日本最大級の大会で2位になった事実は偉業だと思う。初出場で大健闘だと思う。もうチート疑惑はかからないと思う。
今はただ負けたことが悔しい。この場所で戦えたことが誇らしい。2位という成果が嬉しくもあり、悲しくもある。
結局……僕が選んだこの道は正しかったのだろうか。最終的には負けてしまって優勝はできなかったこの道は正しかったのだろうか。
わからない。今は感情が入り乱れすぎている。
今残った結果は決勝で負けたというだけ。決勝まで勝ち残ったというだけ。それだけが事実として残った。
僕は今……どんな顔をしているのだろう。
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