第42話 勝ちますよ
だけれど、もう逃げない。自分の好きなことから逃げないと決めたのだ。ここで
しかし……こうして睨み合っていても事態は進行しない。そろそろ気まずくなり始めたとき、
「こっち」
無言だった。なんか……怒ってるように見えた。
あれ……? なんか怒らせるようなことしたっけ……? 僕が負けたら
そのまま僕は
最初に
あたりには誰もいない。誰かがついてくるかと思ったが、そんなこともなかったようだ。
「なんで……」
怒ってる……というより、困惑しているのだろうか。ともかく笑顔じゃない
……なんか僕、テンションがおかしくなっているな。失言をしないように気をつけよう。
『あんな約束とは?』
「大会で優勝できなかったら、いじめられてもいいって……」
まぁ要約するとそういうことだけれど……
『大事なところを聞き逃していますよ。僕が優勝すれば、今後は平穏になります』
「で、でも……その火種って大会は、すごく大きな大会なんでしょ?」
それはそうだ。日本では最大規模かつ最強を決める大会。実際の技量も勝負強さも運も含め、日本最強を決める戦い。
『いつか出場したいとは思ってたんですよ。ゲームは僕も得意分野ですし、一番強いって思ってますから』
本当は思っていない。僕より強い人は少数ながらいる。もしもミラージュ897さんとかが大会に参加していたら、僕は負けるだろう。
それでも出場する。答えは簡単。出たいから。
「それは……本心?
『無理なんてしてませんよ』
「……本当……? でも……」
「勝ちますよ」
自分でも驚いた。今聞こえた声が誰の声なのか、一瞬分からなかった。
僕の声だ。あまりにもあっさりしゃべってしまったので、自分でもビックリしてしまった。かつてこんなにも簡単に声が出せたことはなかった。
それはきっと覚悟を決めたから……それと、相手が
僕はスマホをポケットにしまって、
「これは僕の本心です。僕が出場したいと思って、僕が出場すると決めました。
「……」
どうやら僕の覚悟は伝わったようだ。ありがたい限りである。
ついでだし、このまま伝えてしまえ。
「その大会……東京であるんですけど……その……」自分がしゃべっているということを意識した瞬間に、また喉が閉まってきた。でも、一度深呼吸をしたらまだしゃべれた。「よかったら、見に来てくれませんか? オンラインでも配信があるので……それでもいいですけど」
「行くよ。直接見に行く」
「ありがとうございます」
直接来てくれるとありがたい。そっちのほうが燃えるし……本来の目的も果たすことができそうだ。
そう……僕は優勝するだけではダメなのだ。
まぁ……当面の目標は優勝だな。優勝すれば盛り上がるだろう。
それと……念のため釘を差しておく。
「あの張り紙の犯人ですけど……犯人探しはしないでくださいね。大会でチート疑惑は晴れますから、犯人なんて探す必要はないです」
「そ、そういうものなの? 私はチートとか詳しくないんだけど……」
だろうな、ゲームに疎いのだからチートなんて知るわけもない。
「そういうものですよ。チートというのは要するに不正行為なので、検査が厳重な大会で活躍すれば疑いの目は向かなくなります」
オフラインでチートなんてしたらすぐにバレる。しかも国内最大の大会を見ている人は目も肥えているのだ。そんな人々をごまかせるわけもない。
「とにかく、優勝すれば全部解決です」チート問題も……それ以外のことも、たぶん解決する。「せっかくなので、勢いで告白していいですか?」
「勢いでなら聞きたくないかな」それもそうかもしれない。「それは然るべきタイミングで、正式にお願い。そうしたら私も勢いじゃなくて、真剣に考えるからさ」
だったらなおのこと勢いで告白したほうが良かったかもしれない。冷静になられたらフラれる可能性が高いからな。
それにしても……
じゃあ僕も覚悟を決めよう。僕のために、
たとえ負けても後悔しない。何度だって挑んでやる。
まぁ……アレだ。
どうせ一発で優勝するから、何度も挑まないけどね。
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