第32話 誰かさん
『それで……
『チョコレートということにしておいてください』
『ピンポイントで苦手なものだよ。ツキがないね』
『初デートはどうだった?』
『デートじゃないと思いますよ』少なくとも
『ああ……
まぁ要するに
……僕も……思ってしまった。それくらい僕もゲームに熱中してみたい。僕はまだその領域に至れていない。
そしてもう1つ、
『
『そうなの?』
『はい。まだ言いませんけど』
『なんで? 教えてよー』
『まだ確信がないというのと、すぐに実践できることでもないので』もう少し……準備期間が必要だ。『問題は食事中に、僕がうまく喋れなかったことです』
熱中問題は解決できる可能性が出てきた。
だけれど……
『家まで誘うってことは、さすがに好意があると思うけれどね。まだLIKEだろうけど』LOVEになりそうにないわけだ。『まぁキミはチャットで会話するタイプだからな……食事中だと手が塞がって、なかなか会話できないよね』
そうなのだ。片手にスプーン。片手にお皿では、スマホを触る時間がない。それを察して
それではいけない。なんとかして会話しないと……
『差し支えがあるなら答えなくていいんだけど、聞いていいかな?』
『どうぞ』
『キミがしゃべらないのは先天的な理由?』
『後天的ですよ』思い出して、ため息をついてしまう。『声が気持ち悪いって言われて、それから声が出なくなりました』
『嫌なことを思い出させたね。ごめん』
『ありがとう』
それきり、僕の声に対する話題は終わった。おそらく気を使ってくれたのだろうな。
『しかしどうしたものかね。
『その理由は何でしょうね。バカだから、という建前はいりませんよ』
以前に同じような会話をしたとき……
だが
『ある程度親しくなったら、
『壊れている……?』
『バスケで全国に行っても何も感じず、部屋は殺風景。レモネードをかけられても怒らない』僕が知っているだけで、それだけのエピソードがある。『優しいって言葉じゃ片付けられないよ。感情が薄いとか……そんな言葉でもまだ足りない』
『最初から、なにかが足りないって感じですよね』
『そうそう。そんな漢字』漢字……? 『感じ』
……
ともあれ……
だけれど……
『私の勘違いだろうけどね』そうだ。
そうなのかもしれない。心で感じたままに動くより、頭で考えてしまうのかもしれない。冷静すぎるがゆえの悩み。
そのヒントはすでに得ているのだけれど……もう少し時間がほしいな。
『まぁ、
『未来の誰かに期待ですね』
『期待してるよ。誰かさん』
どうも誰かさんです。こんな誰かさんに
でもやらないといけない。なにより……僕がやりたいと思っている。
まぁ……
僕みたいな人間のことは、
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