第31話 同類かもしれない
殺風景な部屋で
意識した瞬間に心臓がうるさくなるが、ここは耐えなければならない。
『今日のゲームは熱中できそうでしたか?』
「うーん……どうだろう……」さすがに食事中は、
それはわからない。惰性で続けても意味はないかもしれない。しかしすぐに辞めても効果はないかもしれない。
結局……
『最後までやってみないと、わかりません』
「そうだよね……やっぱり、途中でやめるからダメなんだよね」
『ちなみに、今までなにか……長く続けたものはありますか? なにか成果を成し遂げたこととか』
「中学の時に、バスケットボールで全国に行ったよ」
ウソでしょ……? 全国選手?
なんかしれっとすごい情報が出てきたな……もしかして
『なんで今はバスケをやめたんですか?』
「うーん……なんだか失礼な気がして……」
それから
「知り合いにさ……バスケが大好きな子がいるの。県外の人なんだけど、練習試合で仲良くなった」相変わらず友だちを作るのが早い人だ……「その子はね、なにもかも一生懸命なの。練習も全力で、試合に勝てば全力で喜んで、負ければ全力で悲しむ。そんな子だったの」
「この間……その子がいる県の予選があったの。勝ったら全国……つまり決勝まで勝ち進んでた」
なかなかすごい人と知り合いなんだな。県大会の決勝まで行きつけるような人と知り合いだったとは……
「まぁ……そこで彼女は負けちゃったの。それですごく悔しかったんだと思う。いっぱい泣いてて……とても声をかけられる雰囲気じゃなかった」その人は……決勝に懸けていたのだろうな。「そこまではいいんだよ。彼女が……
じゃあなにが気になっているのだろう。
「その
後輩の前で強がっていただけなんだろうな。3年生ということは最後の大会の可能性もある。
「
執念がないからこそのリラックス。
勝ちたいがあまり体が縮こまってしまっては意味がない。勝利したいならば、あえてリラックスすべき。
とはいえ勝ちたい気持ちは必要だ。その心のコントロールは……スポーツとゲームは共通している。試合ならすべて共通するのかもしれない。
強気すぎても弱気すぎてもいけない。そんな最高の心のバランスを見つけないといけない。
「もしかしたらね……
その大会に全身全霊を持って望んでいたんだろうな。周りからは執念が足りないと言われて……ヘラヘラしているように見せかけて、誰よりも勝ちたかった。後輩の前で笑っていたのは……それは彼女のプライドだったのだろう。
「私にはその世界に行き着けないって……思ったんだ」いつの間にか、2人とも食事の手は止まっていた。「同時に思ったの。私も……
……
正直……かなり難しいことだろう。
負けて泣くというのは……その競技に真剣だった証だ。熱意を注いで、それしか見えなくなって……毎日毎日続けた努力が自分に跳ね返ってくる。
だからこそ嬉しいし悲しい。努力も妥協もすべて自分で背負うからこそ苦しいし、楽しい。
その領域に行きつける人は……どれくらいいるのだろう。負けて泣くほど悔しいと思ったことは……僕にもないのだ。
結局そのまま……僕たちは無言に近い状態で食事を終えた。帰り際に
僕は……ゲームに熱中していると思っていた。だけれど……
……ちょっと僕にも……思う所ある話だったな。
そして
それから……思った。
好きな食べ物を聞き出すの忘れてた。
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