第8話 無理がありますよ
仮にこのクラスのカーストを定義するのならば、おそらく1.5軍くらい。彼女はカーストとかに興味がなくて、下の人間とも仲良くしてくれる。結果としてカースト争いでは最上位ではない。だから人気があるんだけれど。
まぁこのクラスには神がいるので、カーストもあんまり機能していないけれど。
そんな彼女が……どうして僕に話しかけてきたのだろうか。
相変わらず美少女と2人というのは心臓に悪い。しかもいつも笑顔な
『なんで僕なんですか?』
『友達に相談してみただけだよ。なにかが好きって断言してくれる友達に、相談してるの』
……つまり他の友達にも相談しているわけだ。そりゃそうだよな。僕だけに相談してくれたなんてのは思い上がりだ。
僕がゲームを好きだと断言したから、こうやって相談してくれているようだ。本当に……ゲームが好きで良かった。
……まだ友達になるとは言ってないんだけれど……まぁ友達なんてのは、こうやって勢いでできるものなのかもしれない。
『キミは、どんなゲームをするの?』
『一番多いのは格闘ゲームです。でも、パズルゲーム以外はなんでもやります』
パズルゲームはあまりにも苦手である。気が狂いそうになるので、プレイするのをやめた。
『格闘ゲームは、どういうところが面白い?』
……格闘ゲームの面白さ……
なんだろう……言葉にするのは結構難しい気がするけれど……言葉にしないといけないんだよな。だってチャットしてるんだもんな。
『一番は駆け引きだと思います。相手のやろうとしていることが伝わってきたり、逆に自分がやろうとしていることが伝わってきたりするので、それを読み合いに活かします。会話をしている気がします』
僕は面と向かっての会話が苦手なので、格闘ゲームのほうがよっぽど会話できているような気がする。
『なるほど。同じ趣味を持つ者同士、通じ合うものがあるんだね』まぁそういうことである。『私の友達の、格闘技をやってる人も同じようなことを言ってたよ』
格闘技をやっている友達……誰のことだろう。わからん。
『私にも、その醍醐味は味わえるかな』
『わかりません。たぶん、結構やり込まないと感じられないかも……』
自分のことで手一杯なら、相手の考えを読むことはできない。まず自分の動きを極めてからの話だ。
『やり込む……』その概念が伝わらなかった……わけではなさそうだ。『そうだよね。夢中になるっていうのは、かなりやり込んだあとに得られるものなんだよね。私は上っ面だけ見て、すぐやめちゃうから……長続きしないの。おかげでいろんな競技とか遊びのルールとか……そんなのは知ってるけれどね』
たしかに悪いことかもしれないけれど……別の側面から考えれば悪くもない。
『そんなに悪いことじゃないと思いますよ』
『そう?』
『いろんな分野を広く知っているというのは強みだと思います。1つのことに熱中するだけが美徳じゃないと思います』
実際に僕は……ゲームに熱中しすぎていろんなものを失っている。
人間関係もそうだし、勉学だって遅れを取っている。他のスポーツのルールなんて、何一つわからない。
『そういう考え方もあるのか……』
ちょっとは良いことが言えただろうか。
とはいえ……
『もちろん、なにかに熱中しようとしていることを否定するわけじゃありません。今のままでも、あなたは十分に魅力的だというだけの話です』
何気なくチャットを送信すると、
「割と積極的だね。勘違いしちゃうぞ」
言われて……ハッとしてしまった。
魅力的……なんて言葉を軽々しく使ってしまった。褒め言葉だから
これじゃプレイボーイだ。とんだキザ野郎だ。気持ち悪い男だ。
だけれど……なんだかチャットになると僕は喋りやすいらしい。それは良いことなのか悪いことなのか……
『あなたを魅力的じゃないというのは、無理がありますよ』
「……」
……僕はいったいなにを言っているのだろう……? なんでチャットで
……
……言葉では喋れないのにチャットになった途端強気になる男か……クソダセェな……
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