第二十三話 そのポーター、3人相手に朝までセ〇〇スする

「どえらいことになってしまった」


 僕はベッドで寝ころびながらつぶやく。


 時刻は深夜――。


 僕は王宮内にあてがわれた部屋の中にいた。


 室内の広さは冒険者ギルドの飲食スペースほどはあるだろうか。


 とにかく広い。


 マジで広すぎる。


 僕はあらためて室内を見渡した。


 部屋の中にある家具などは、目玉が飛び出るほど高価なものばかりだろう。


 僕が寝そべっているベッドもそうに違いない。


 平民には一生お目にかかることができない羽毛のベッド。


 しかも天蓋てんがい翠帳カーテンのオマケ付きだ。


 では、そんなベッドの中にいてすぐに睡魔に襲われたかと言われれば違う。


 あんなことを言われた挙句、こんな部屋に案内されて寝られるか!


 僕は心中で高らかに叫び、ジタバタと身体を動かす。


 事の発端は2時間前のことだ。


 あろうことか僕は、平民からお貴族さまにレベルアップしてしまった。


 ウメダという名字と領地をもらい、もしも今後は誰かに「あなたの身分と名前は何ですか?」とたずねられたら「僕は貴族のカンサイ・ウメダ! ウメダ領の領主です!」と名乗ってもよいというのだ。


 いや、僕が勝手に名乗ることにしたわけじゃないんだよ!


 と、自分自身にノリツッコミを入れるほどの異例な出来事である。


 与えられた身分は五爵(公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵)の中で1番身分が低い男爵位だったが、それでも男爵位というのは地方の有力者や王国から派遣された役人に与えられる爵位で、僕のような平民を絵に描いたような平民に与えられるものでは本来ないらしい。


 そんな僕に色々と教えくれたのはクラリスさまだ。


 やがてパーティーも終わってお開きになったとき、僕はクラリスさまに差し支えなければ貴族や領主に関することを教えてくださいと願い出た。


 するとクラリスさまは、


 ――わかりました、カンサイ殿。詳しい話はのちほどカンサイ殿の部屋で……


 と、なぜか両頬を赤らめてどこかへ消えてしまった。


 そういえば、と僕は思い出す。


 クラリスさまが足早にどこかへ立ち去ったとき、カーミちゃんとローラさんも「このあと用がある」とクラリスさまが去った方向へ姿を消したのである。


 確か3人の向かったほうには大浴場があったような……。


 などと僕がうろ覚えの記憶を蘇らせていたときだ。


 コンコン。


 誰かが扉をノックしてきた。


 クラリスさまかな?


 僕はベッドから下りると、等身大の姿身で自分の格好を軽く確認する。


 クラリスさまが来ることはわかっていたので、今の僕は寝間着ではなく普通に洗い立てのシャツとズボンをはいていた。


 うん、きっとクラリスさまも正装のはずだから失礼のない格好でないとね。


 身なりを確認した僕は扉に近づくと、ごほんと咳払いをする。


「今、開けます」


 そしてガチャリと扉を開けた。


 …………………………………………え?


 僕は扉の前に立っていた人物を見て固まった。


 氷魔法を全身に浴びたように固まった。


 目の前にいるのはクラリスさまだったが、なぜかそのクラリスさまはネグリジェ1枚というあられもない格好だったのだ。


 しかもそのネグリジェはスッケスケだった。


 なので僕はびっくり仰天雨あられの状態になって固まったのである。


 加えてネグリジェ1枚と表現したのも比喩じゃない。


 スッケスケのほぼ透明なネグリジェだったため、今のクラリスさまが〝下着すらもはいてない〟状態だったのが文字通り透けて見えた。


 だから僕はネグリジェ1枚と表現したのである。


 ごくり。


 と、僕は無意識に生唾を飲み込む。


「……カンサイ殿、部屋に入ってもよろしいか?」


「え……あ……は、はい! も、もちろん!」


 僕はさっと横に退いてクラリスさまを室内にうながす。


 クラリスさまは全身をもじもじさせながら部屋の中へと入ってくる。


 そのとき、僕の鼻腔にフローラルなとても良い匂いが漂ってきた。


 間違いない。


 クラリスさまはお風呂から上がったばかりだ。


 なぜ? なんて言葉は浮かんだものの一瞬でかき消した。


 女性がお風呂に入るなんて当然だ。


 特にクラリスさまは王族である。


 下々の人間と違って、1日に何度もお風呂に入ってもおかしくはない。


 おかしくはないが、さすがに下着すらもはいていないネグリジェ1枚で男の部屋に来るのはいかがなものだろう。


 などと思ったのは僕の頭だったが、今のクラリスさまの格好と匂いに対してもう1人の僕がとんでもない主張をしてきた。


 もう1人の僕――いや、息子と表現したほうがピッタリかもしれない。


 その息子がガッチガッチのビンビンに挙手したのである。


 え? 独身のお前に息子なんていないだろうって?


 それがいるんだよ! 僕の股間にはチ〇チ〇という名の息子がね!


 やがてクラリスさまはソファではなく、あろうことかベッドに腰を下ろしたのは気配でわかった。


 なぜ気配でクラリスさまの動向を感じていたかというと、僕はクラリスさまにずっと背中を向けている状態だったからだ。


 理由は僕の息子が――ああ、もう面倒くさい。僕のチ〇チ〇が盛大に勃起して恥ずかしいから正面を向けられないんだよ!


「カンサイ殿、私がここへ来た理由だが」


 自分自身にツッコんでいると、クラリスさまが背中越しに話しかけてくる。


「は、はい! ぼ、ぼ、僕に貴族や領主について教えてくださるためですよね!」


「それはそうなのですが……その前にカンサイ殿に頼みたいことがあります」


 こちらへ、と僕はクラリスさんにベッドへ来るように誘われた。


 頭では「ダメだ!」と思いながらも、僕の身体は甘い蜜に誘われたミツバチのようにふらふらとクラリスさんの元へと向かっていく。


 ちょこんとクラリスさまの隣に座る僕。


 隣からは言い知れぬ雰囲気がひしひしと感じられる。


 頭がクラクラするほどの甘い匂い。


 痛いほど高鳴っている僕の鼓動。


 早く力を解放させてくれ、とせがむ股間の息子。


 正直、もう貴族や領主の知識を得るなどどうでもよかった。


 少なくとも今は、このはち切れんばかりの性欲に身を任せたい。


 しかし――しかしである。


 相手は王族であり、第三王女のクラリスさまだ。


 手を出そうとした時点で、打ち首獄門はほぼ確実だろう。


 そんなことを考えていると、クラリスさまがいきなり僕に抱き着いてきた。


 僕は押されるような形でベッドに倒される。


「私を抱いてください」


 直後、僕は自分の目と耳を疑った。


「え~と……もう抱いていると言えば抱いています」


 事実、僕はクラリスさまにしがみつくような格好になっている。


 これを世間一般的には〝抱いている〟と表現しなくもないのではないか。


「いえ、そういう意味での〝抱く〟ではありません。私とこれから〇〇と××をして△△△や××××をしてほしいのです」


 直球キタアアアアアアアアアアアアアアアア――――ッ!


 王女さまの口から出た言葉とはとても思えなかったが、うるんだ瞳や上気した顔などを見るとクラリスさまは冗談で言っているわけではないらしい。


「私はカンサイ殿……いえ、カンサイさまに心の底から惚れてしまいました。なので私の初めてをカンサイさまに献上いたします。それを以てカンサイさまの忠誠の証とさせてください」


 バンバンッ!


 僕が激しく混乱していると、再び扉がノックされ――いや、激しく殴打された。


「カンサイ、まだ起きておるか! 馳走を持ってきたぞ!」


 次の瞬間、扉を殴打した人が部屋の中にズカズカと入ってきた。


 カーミちゃんとローラさんである。


「うおッ!」

 

 2人を見た瞬間、僕は盛大に声を上げた。


 カーミちゃんとローラさんもクラリスさまと同じく、下着すらつけていない裸同然のネグリジェ姿だったのである。


「今日の闘いの褒美じゃ! わしとローラを馳走として存分に食してくれ!」


「そ、そなたら! 浴場での話と違うではないか! まずは私が先と――」


「固いことを申すな。1人よりも2人、2人よりも3人のほうがカンサイも喜ぶ。なあ、カンサイ? 1人よりも3人の女を同時に抱くほうが背徳感があって興奮するじゃろ?」


「そ、それはそうで……って違いますよ!」


「まあまあ、そう理性を保つな。今日のお主は色々と遭って疲れておるのじゃ。そして、そういうときは1発ヤッてスッキリするに限る」


 えええええええええええええええ――――ッ!


「さあ、カンサイ! 理性などはこのさい遠くへ捨て去ってしまえ!」


 カーミちゃんがベッドにダイブしてくる。


「か、カンサイさま。また私を可愛がってください」


 ローラさんも身体をくねらせながらベッドに上がってくる。


「まったく……こうなったら仕方ない。カンサイさま、英雄として3人同時に可愛がってくだされ」


 クラリスさまは満面の笑みを向けてくる。


 このとき、僕ははっきりと覚悟を決めた。


 くそっ、僕も男だ! 


 ここまで期待されたら応えるしかない!


 その後、僕は本能のまま3人とセ〇〇スした。


 窓から朝日が差し込んでくるそのときまで――。

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