◆第28話◆
◆ ◆ ◆
「あれえ久しぶりじゃなあい?」
クラブB。流石と言うべきか前回追い出されてから大分経っていたので警戒される事もなく普通に入れた。マリアは完全にできあがっていて上機嫌で俺に触れてくる。酒癖が悪い上に前回のやりとりはすっぽ抜けてるらしい。鬱陶しいが丁度良い。
「なあ。アフター付き合えよ」
「ええー? あたし疲れちゃったあ」
「シャンパン。ドンペリ。……な、話したいんだよ。二人きりで」
「ありがとう! んーカラオケなら良いよお」
営業後、着替えたマリアをタクシーに突っ込んだ。マリアは俺の首を舐めている。ラブホ街に到着すると一番近いホテルに入りセックスした。
シャワーを浴びたマリアがバスルームから出てくる。酔いは抜けたようだが態度は変わらない。くったりと俺の背中にもたれかかりくすくすと笑っている。
「あたしの事馬鹿にしてるんだと思ってた」
「ガキなんだ。好きな女はいじめたくなる」
「満里奈って呼んで。二人の時は」
マリアがピースに手を伸ばした。一本付き合い、切り出した。
「今度キメセクしようぜ」
「なんだ。いけるクチなんじゃん」
イブから盗んだ薬を見せてやる。マリアは嬉しそうに俺に抱き付いた。
「普段どこから買ってる?」
「川崎だよ。この前まで客にプッシャーがいたけど」
「へえ。俺の知ってる奴かな」
「もうそういうのいいって。田代だよ」
「だよな。あいつ最近、全然来なくねえか。それで捜してた」
「最初からそう言えばよかったのに。まあ店だったしね」
「まりなの口の固さを試してたんだよ。見込み通りだったけどな。田代の居場所知らないか。行きそうな場所とか」
「心配しなくて良いよ。モノならあたしが用意しとく」
マリアが俺を押し倒し腰に跨がった。引っくり返して体制を入れ替える。
「お前最高だな。なあ、田代の事教えてくれよ。心配してるんだ。結構仲良かったんだよ」
「うーん。そんな長い付き合いでもなかったからな。あ、仕事は辞めたいってしょっちゅうこぼしてた」
「やる気なかったんだな」
「実際、上に相談してたみたいよ」
篠田から聞いた話と矛盾しない。
「面倒見たい女がいるらしい。そいつの為かもな。何か聞いたか?」
「知らない。でも世話になってる人はいるって言ってた。それは女の人っぽかった」
引っ掛かった。
世話になってる女だと?
「その女の事詳しく聞かなかったのか」
「うん。だって別に田代の顔タイプじゃないもん」
「なぜ女だと思ったんだ」
「逃げてるって言う割りにはナリが綺麗だった。目は死んでたけど爪が短かったしひげもちゃんと剃ってたから」
経験上女のこういう嗅覚は信用出来る。やはり裏に女がいるようだ。俺が追うべきは田代ではないのかもしれない。
「それなら安心か。そろそろ行くか」
「まだ大丈夫だよ。お昼くらいまでは」
頭の中を整理しながら二回目を済ませるとマリアを抱いてじっとした。
マリアの様子に嘘はない。篠田が言う"面倒見たい女"って奴は"世話になってる女"と同一人物だろうか。それとも。
帰たくてたまらなかったが俺は今この女に心底惚れてるのでここを動くわけにはいかない。
寝息が聞こえるとそっと腕を抜きシャワーを浴びた。何度も何度も身体を洗った。
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