第17話
結論、全員シロだった。少なくとも店に持ち込んではいない。
メイクポーチから出てきた鎮痛剤には冷や汗をかかされたがとにかく従業員の私物から薬物は出てこなかった。キャストの勤務態度や人間関係を一人一人よく見るようになったが変わった所はない。
キャバ嬢にしては個人主義が多いような印象は最初からあった。夜職の女は群れる奴はとことん群れるがそうじゃない奴は仕事以外一切関係を持たない。アンクのキャストは後者が多い。
二週間で系列店を畳みキャストの移籍の手続きを済ませた阿久津は今、涼しい顔で篠田と向かい合っている。
「篠田さん。店、潰しちまいましたよ」
「田代の友人を当たってる。ちょっと待ってくれ」
篠田は最初に会った時より一回り縮んだように見える。余所の縄張りで勝手に商売した挙げ句閉店に追いやった。篠田も想定外だろう。これなら組の親父に指でもくれてやった方がいくらかマシな状況だ。
「田代を連れてこい」
阿久津は容赦ない。店長代理のトラが不安そうに様子を見ていた。
◆ ◆ ◆
篠田から電話があったのはその三日後だ。興奮した鼻息が聞こえ不快感と手応えを感じる。
「あの野郎、一昨日市内のキャバクラに現れてる。欠勤が多くて捕まらない女を引っ張り出したんだ。俺はもうこの辺じゃ飲めねえよ」
クラブBのマリア。阿久津の店ではないがアンクと同じエリアにある。噂じゃ客を酔わせてぼったくるという昔ながらの店だ。作りかけのドリンクを他の黒服に押し付け店を出た。遠くない。阿久津には事後報告と決めタクシーに手を上げた。
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