第34話 普通の1日
彼女を自宅に招いた翌日僕は普通に1日を過ごした。彼女を頭の中で汚し続けた罪悪感はあったけれど、だからといって彼女を手放す気は全然無かった。
朝起きた時は物凄くスッキリしていた。少し元気が無かったとも言える。実際にお袋が風邪を疑い熱を測るように言ってきたぐらいだ。実際は平熱で何も問題は無かった。お袋は僕が昨日長時間水のシャワーを浴びていたから体調を崩したと思っていた。どうしてそんな事分かったのか聞いたら、屋外のボイラーの音がしないのにシャワーの音だけしてたかららしい。名探偵かよ。
体調悪かったら早退しなさいと言われて送り出された。
朝にアサカワがまた匂いが変わったと叫び、放課後まで威嚇され続けた。以前こうなったのは彼女と付き合った翌日だったけな。それ以降は少しづつ前の状態に戻って来ていたのに振り出しに戻った感じだけど、遠からずもとに戻ってくれると信じて静観する事にした。
アオシマが僕の肩に手を置いて調子悪いのかと聞いて来た。朝に測ったけど熱は無かったと言ったら怪訝な顔をしながら気をつけろよと言った。その日のアオシマの手は重く無かった。
アサカワ、アオシマのボケとツッコミには乗り切れ無かったけれど、彼女とは普通に話が出来ていたと思う。笑顔で喋り、手を繋いでバスに揺られる。そして公園で軽くキスをして別れた。彼女が昨日と同じようにスキップ気味に早足で家の方向に駆けて行ったのだから。
僕はなんとなく少年野球の監督に会いたくなって小学校のグラインドに行った。もう部外者ではあるけれど中学校の時に何度も監督には会いに行って相談を聞いて貰っていた。
監督は相変わらず大声を上げながら少年達に指導をしていた。僕が来たことを知ると、一球待てのサインを送ってきたので僕はベンチに座って監督が来るのを待った。
少年達に練習終わりのからだを解す運動を指示してから監督はベンチにやってきた。
「おう!久しぶりだな!」
「ご無沙汰しています」
「合格が決まったと言ってきた以来だったな、とりあえず入学おめでとう」
「ありがとうございます」
「高校でも野球は続けるのか?」
「いえ、別の部に所属しています」
「へぇ・・・何だ?」
「軽音部です」
「軽音てあのガシャガシャ音を鳴らすあれか?」
「えぇその軽音です」
「また変な事を始めたもんだな」
「そうでもないんですよ?反復練習を繰り返して上達させるのは野球とあまり変わらない気がしています」
「なるほどなぁ・・・」
監督は何かを考え込んでいた。
「その部活は土日もやるのか?」
「文化祭と創立者祭の前以外は基本的には休みみたいですよ?」
「それなら時間がある時で良いから土日に俺の手伝いをやらんか?」
「コーチをやるって事ですか?」
「あぁ、雑用と指導と練習試合での審判だな」
「なるほど・・・」
「安いが報酬も出すぞ」
「えっ?監督とかコーチってほぼボランティアでしたよね?」
「お前らの代が全国大会に行った事で入団する子が増えて協賛金も多く貰えるようになってるんだよ」
「それは初耳です」
「まぁ生々しい話だからな」
「そうですね」
「俺も放課後だけなら問題ないんだが、土日に朝から夕方まで多くの子を見続けるのは大変でな」
「それは大変そうです」
「だから少しでも手伝ってくれるだけでも有り難いんだよ。それに今年は良いところまで行けそうだしな」
「いい選手が集まってるんですか」
「全国はあれ以来まだだけど、連続でいいところまでは行ってるからか、隣の学区から越して来てまで所属する奴もいるんだよ」
「名門チームじゃないですか」
「お前らの代が初代みたいなもんだけどな」
「いえ・・・僕たちが全国に行けたのは監督のおかげです」
「そりゃそうだ!俺が鍛えたんだからな!」
「はい」
「でもそれに着いて来たのはお前らだぞ」
「はい!」
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