第32話 寿司食いねぇ・・・

 若干起きていた着衣の乱れを直して自室を出て2人で両親を出迎える。


「おう愚息!ちゃんとヤッてたか?」

「ヤッてねぇよ!」

「ちっ!ヘタれやがってよ!本当にお前俺の息子か!?」

「あなた?」

「あっ・・・ごめん・・・そんなつもり・・・母さん?・・・いや!止めて!息子と息子の恋人が見ている!」

「ちょっとこの人と話す事が出来たから少し待っててね?」

「助けて・・・」

「絞めてやって!」

「裏切者!」

「元々仲間じゃねぇ!」

「アレをあげた仲間だろぉぉぉぉぉぉ!」

「早く連れてって!」

「お土産のお寿司あるからテーブルに並べておいて」

「イエスマム!」

「いやぁぁぁぁぁぁ」


 父さんと母さんは両親の寝室に向かって行った。


「えっと・・・お寿司食べるよね?」

「うん・・・」


 ここで家族が待ってるからなんて言って帰れないだろうな・・・。

 両親の部屋から「まってそれはエグい!」とか「母さん愛してるから!」とか「あっ!ちょっと!それは反則!」とか聞こえてくるけどナニしているんだろう?

朝のやり取りって本当に演技だったの?


 仕出しのお寿司をお皿に盛り醤油皿とお箸を4人分並べる。付属のお吸い物の元と緑茶の粉をお椀や湯呑に入れ湯を注げばいい状態にする。そんな準備を終えた時に両親が寝室から出て来た。親父の服と髪は結構乱れていて、母さんが少しツヤツヤしている。本当にヤッてないよね?さすがにしてたらドン引きだよ?


 親父はそのまま黙ってテーブル前の席に座った。何故かいつもの上座じゃなく一番の下座にだ。

 お袋も黙ってお椀と湯呑にお湯を注いで席に座る。そしていつもの下座じゃなく一番の上座に座った。

 呆気に取られて立ったままの僕と彼女に目配せして座れと訴えて来た。


「食べましょう」

「「「・・・」」」

「いただきますは?」

「「「いただきます!」」」

「はいいただきま~す」


 妙に沈黙した状態で食事が始まった。

 この家では非常に珍しい、いやここ数年では全く無かった状態だ。


「それで勉強は進んだの?」

「はい!」

「あれ?私の可愛い息子から返事が無いわ?」

「・・・進んだよ・・・」

「何か元気が無いわねぇ・・・もしかして手をだしたの?」

「出してねぇよ!」

「そうなの?キスもないの?」

「「!!!」」

「やったわ!さすが我が息子だわ!」

「ははは!俺の息子だからな!」

「あれ?さっき俺の息子だと疑う様な事言わなかったかしら?」

「いや・・・それは・・・寿司美味しいなぁ!」

「そうね・・・お寿司美味しいわね・・・よね?」

「はい!」

「あれ?私の可愛い息子から返事が無いわ?」

「・・・美味しいです・・・」

「それは良かったわ・・・それでキスの後に押し倒さなかったの?」

「!!!」

「やったわ!押し倒したのよ!お赤飯炊かなくちゃだわ!」

「がはははは!それでこそ我が息子だ!」

「あなた?」

「はいスイマセン・・・寿司食いねぇ・・・」

「そうね・・・お寿司食べましょうね・・・ね?」

「はい!」

「あれれ?私の可愛い息子が・・・」

「食べます!」

「はいそれでよろしい・・・それでヤッたの?」

「ヤッてねぇよ!」

「チッ・・・ヘタレ・・・」

「か・・・母さん?」

「何かしら?」

「いつもの母さんじゃない・・・」

「あら?いつもの愛する私じゃないの?」

「あ・・・愛してるよ!」

「あなたぁ・・・」

「母さん・・・」


 僕達は何を見せられているんだろう・・・。それのいつの間にかほぼ白状させられているし・・・。世界最薄のアレの事を彼女の前で追及されなくて良かった。あの空気では白状していたかもしれない。

 僕は美味しいんだか不味いんだか分からないお寿司を流し込むように食べた。

彼女も食べているけど味感じれてるかなぁ?

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