第28話 過去の僕を殴る?

 お茶を一口飲み落ち着いた所で親父が話し始めた。


「それで家の愚息とはどこまで行ってるのですか?」

「まだキスもしていませんっ!」


 ミサキさんや、君は何を答えてるんだい?


「おい!セクハラだぞ!」

「な・・・なんだってぇ!?」

「まぁまぁまぁまぁまぁ」

「真面目な顔をして何を言ってやがる!」

「だって息子が心配なんだもんっ!」

「まぁまぁまぁまぁまぁ」

「何が心配なんだもんっだ!可愛く言ったって気持ち悪いんだよ!」

「気持ち悪いだなんて酷い!」

「まぁまぁまぁまぁまぁ」


 いつもと違う精悍な親父の姿に感心ていた僕を殴ってやりたい。


「公務員ってコンプライアンスが厳しい職場じゃないのか?」

「うっ・・・それを言われると厳しい」

「まぁまぁまぁまぁまぁ」

「職場に女性の声色で親父にセクハラ受けたと電話してやるぞ!」

「おい!ヤメロ!」

「まぁまぁまぁまぁまぁ」

「女子高生にセクハラしていましたって名指しで市民の声に投書してやるぞ!」

「本気でそれはヤメロ!」

「まぁまぁまぁまぁまぁ」


 お袋の「まぁまぁ」はそろそろ止まりませんかねぇ?


「あははははははははははははは!」


 彼女が壊れた様に笑い出した。


「ど・・・どうしたの?」

「だってとっても面白いご家族なんだもん!」

「面白い?」

「漫才見ているみたいだった!」

「えっ?普通だろ?」

「それはないよぉ!」


 僕にはよそ様の事情は分からないので彼女の言葉の真否が分からない。


「公務員のご家庭と聞いて居たからもっと堅苦しい家だと思っていた」

「だって高校生だったお袋を孕ませた親父だぞ!」

「おい!それを話したのか!」

「悪いか!?」

「我が家の醜聞だぞ!?」

「その醜聞で出来たのが僕なんですが!?」

「あははははははははははははははは!」


 お袋は「まぁまぁ」が止まりニコニコしていた。親父は「フム」と息を吐き出し黙った。彼女は笑い疲れて息を切らしている。僕も親父と口論したため息切れを起こしている。


「彼女の緊張はもう取れたかしら?」


 ニコニコしていたお袋がいきなりそういった。


「えっ?」


 突然の発言に驚き声が出てしまった。


「だーって初めて彼氏の家族に会うなんて緊張するものでしょう?」

「まぁそうだね・・・」

「だからこの人と一芝居売って彼女の緊張を解そうとしたのよ」

「芝居!?」

「そういう訳だ」

「私たちはあなた達の付き合い方にとやかく言うつもりは無いわ」

「俺たちがお前らの年の時にとかやくい言える様な付き合いが出来ていた訳じゃないからな。」

「それは確かに・・・」

「だから好きな様にやりなさい、その結果が後悔するものでも逃げずに受け入れるのよ?」

「まぁ本気で困ったら助けてやるから全力で今を楽しめ!」

「あぁ・・・」

「じゃあこの人と出かけて来るからあとは好きになさい」

「しっかりヤるんだぞ!」

「その手をヤメロ!」


 その変則的なグーは少女に見せて良い物じゃないぞ!


「ケーキとジュースは冷蔵庫に入っているから適当に食べてね、お昼もチンすれば食べれる物入っているから」

「母さんと夕飯の時間まで遊んでくるからな!ここの片付けは任せたぞ!」

「あぁ・・・」


 そういって両親はリビングから楽しそうに出ていった。関心して損したと思っていた部分は消して過去の僕を殴るのはやめて置くけど、そのやり方はどうかと思うよ?でも有難う。


 母さん達がこうやって家で過剰なジョークをし出したのは僕が中学校に入ってしばらく経った頃から少しづつし始めた。きっと僕が学校でうまくいってない事に気が付いて、明るくしようとしてくれたのかもしれない。そういまさかギシアンを気が付かせたのもワザと?いやいやそれは無い無い。無いよね?そんなので僕は元気にならないよ?逆に両親の情事を知ってしまうと萎えると思うよ?萎えたよね?僕・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る