第27話 彼女を迎えた時の両親

 公園についたら既に彼女はベンチに座って待っていた。僕が来た事に気が付いた彼女はピョと飛び上がるように勢いよく立ち上がり小走りにかけて来る。そして僕の腕を掴んでおはようと言った。彼女は最近の陽気のために春らしい装いから少しだけ薄着でふわふわした装いになっていた。少し息を切らせながら嬉しそうに腕を掴んでいる彼女が可愛い。他の女がやったらあざといと思いそうだけど、僕は彼女を天然だと固く信じている。天然ものは高級品だ。何せ養殖ものでもお袋が天然ものだとと言って出してくれば何となくいつもと違って美味しく感じてしまい、天然ものはさすがに美味しいねと答えてしまうぐらいの価値があるものなのだ。あの時のお袋がしたしてやったりの表情は墓場まで忘れないて居てやるからなっ!


 彼女の持つカバンを僕が持ち手を繋いで歩き出す。こういった自然の動作が出来るようになった事が最近の僕達の進化だ。うまく使われるなんて言うなよ?僕が持ちたいと言って彼女が遠慮してを繰り返してやっとつかみ取ったやり取りなんだ。


 僕達は歩調が合う事は最初のデートの日に分かって居る。2人とも足が短いなんて言うなよ?それは相対的なものであって、決して僕と彼女は手足の長さのバランスが悪くて背が低い訳では無いのだ。子供体形と言われたらその通りだけどさ。でも俺の物は立派だぞ?ネットで調べた平均ぐらいの長さがある事はパソコンの画像を開きながら目盛りのある三角定規を当てて測ったので知って居るのだ。13センチ?1センチ以内に収まってますが?体格からしたら立派だと思いませんか?それにまだまだ成長するかもしれませんよ?


 いつもの他愛のない話を続けながら自宅についた。途中で彼女が手土産を買いたいと言ったので和菓子の店に寄った。結構早朝からやってるんだなこの和菓子屋って。


 家に着くとすぐに両親がリビングから出て来た。


「ただいま」

「お・・・お邪魔します!」

「まぁまぁまぁまぁまぁ」

「よく来てくれたね」

「は・・・はい!」

「まぁまぁまぁまぁまぁ」

「立ち話もなんだし中に入ってくれ」

「まぁまぁまぁまぁまぁ」


 親父はしっかり応対していたけれど、お袋は「まぁまぁ」しか言わないロボットになっていた。リビングについてソファーに対面で座るとお袋の「まぁまぁ」がやっと止まった。けれど親父が「母さんお茶をお願い」と言われると驚いた様に飛び上がりキッチンに向かって小走りにかけて行った。小走りの癖にはえーな、こんなに早く動くお袋初めて見たぞ、さすが元スプリンターってところなのか?


「こ・・・これつまらないものですが」

「これはこれはご丁寧にありがとうございます」

「わ・・・私はハジメさんと交際させて頂いて居る、アカホリミサキと言います、よろしくお願いします」

「はい愚息からも聞いております。その辺はお茶でも飲んでからお話しましょう」

「は・・・はひぃ!」


 なんか親父の言葉遣いが丁寧過ぎて気持ち悪い。それに彼女も少しテンパっている。

 僕は彼女の手を握り「落ち着いて深呼吸をして」と声をかけた。彼女はビクッとなったあと、目を瞑り深呼吸をした。親父は僕をやるなコイツという顔をしてみて来て。お茶をみんなの前に並べていたお袋は笑顔で「まぁまぁ」を繰り返すようになった。


「母さん落ち着きなさい」

「はひぃ!」


 どうやらお袋は緊張していたらしい。それは気が付きませんでした。さすが親父と言う所か?


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