第26話 彼女を招く準備

 勉強会当日となった。

 両親にはあらかじめ勉強会で彼女が来ることを言っていたし部屋の掃除も念入りに行った。両親の服装は、出かけない休日の恰好とは思えないぐらいしっかりとしていた。そして夜中にコンビニか何かに行ったあと何かを冷蔵庫に入れていた。彼女へ出すためのジュースかケーキでも買って来たのだろう。

 僕は自室のベッドの下の埃どころか窓のレールの下まで大掃除でもそこまでしないよと言われるぐらいピカピカにした。

 パソコンの中も念入りに掃除をした。お宝画像関係は何かのシステムプログラムのフォルダっぽい名前の場所を作って放り込みロックもかけた。受験の間は封印していた年齢的にやっちゃいけないよ系のゲームもセーブデータだけ残してアンインストールして証拠隠滅した。ネットの検索履歴も消去して、化学式だとか三次関数だとかハドリアヌスとか源氏物語とか教科書に書かれていた適当な単語の他、ギターのコードとか発声練習法とか部活のための単語を調べたようなものを履歴として残した。通販サイトの取引履歴は消しようが無いけれどログインさえされなければ分からない筈だ。ログイン名やパスワードは現在脳内しかないので完璧だ。動画サイトは安眠音とかギターのテクニックとか野球の結果ダイジェストとかを見ている様に工作済。パソコンは部活と野球と勉強と通常のオンラインゲームだけをやっているように見えている筈だ。

 消臭剤もドラッグストアに買いに行き部屋中に念入りにかけまくった。ベッドの布団も昨日はベランダに干して何度もパンパンと叩いた上に消臭剤を何度かかけた。そして昨日はベッドで寝ず床に毛布だけ包まり寝て高校生男子の体臭を移さないようにした。もしもの時に「臭っ!」と思われない準備は万端だ。

 他の秘密の色々は机の施錠が出来る引き出しの奥に封印済だ。世界最薄なんて箱が3箱も見つかったらドン引きされそうだしね。親父があのあと2回も渡して来たんだ、仕方ないじゃないか。というか親父は良くドラッグストア行くよな。お袋との行為でそんなに消費するのか?それとも最近気になって来たという頭頂部用のケアグッズのためか?夜中に両親の部屋から聞こえる小さな声とギシギシガサガサする音が何なのか気が付いた時から、なるべくその気配を感じたら部屋に閉じこもるようにしているから良く分からないけれどさ。あれは中学校1年冬にトイレで起きた時だったたよな・・・。カニ鍋を食べながら日本酒飲んで酔っ払ってたから油断してたんだろうな・・・。


 念入りにシャワーを浴び新品の下着を身に着けお気に入りの服を着た、念入りに歯を磨き口臭予防の薬でうがいをしてから彼女の家の近所にある公園まで彼女を迎えに行った。

 彼女は家の場所を教えてくれたら自分で行くよと言っていたけれど、彼女の私服姿を最初ぐらいは独占したいじゃないか。その内お互いにの家を通い出すなんて事になって、迎えに行く事をしなくなるかもしれないけれど、最初ぐらいは続けたいと思うのだ。

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