第24話 きちんとした大人

 放課後が終わりの時間に、ご乱心のアサカワが彼女に「アイっちに襲われないぃ?」とか「家まで車で送ろうかぁ?」と言ってたけど彼女が「アサちゃん大丈夫だよ」とか「アイ君優しいよ」とか言って宥めていた。まぁ「アイ君優しいよ」の時は僕の顔を見て「ガルルルるぅ」と威嚇をしたけどね。


「学校で話出来なかったね」

「まぁ普段から學校ではそんなに話出来ていた訳じゃ無かったでしょ」

「私が恥ずかしがってたからだよね・・・」

「突然告白した僕が悪いんだから良いんだよ」


 その後は学校での授業の事や部活の事を話しながら帰った。次の週末にまた楽器店に行くデートの約束も出来たし上場のすべり出しじゃないのじゃないのかな?バスでは話は出来なかったよ。手摺に掴まっていない方の手は繋いでいたけどね。


 バス停でじゃあまた明日と言い合って別れた。名残惜しいぐらいが丁度いい。そんな風に思って手を繋ぐ振りながら見送った。反対方向だもんね家。


 彼女のスマホには相変わらずアサカワからメッセージ攻撃が行われているらしい。男ならストーカー行為で即アウト案件だ。会って話せるのにスマホのメッセージでベタベタ会話はどうなのかと思うので、アサカワへの返事頑張ってとおくり返しておいた。それに僕にもアサカワから彼女との交際内容を詰問するようなメッセージが何件も送られて来るしね。

 こいつ勉強しなくて大丈夫なのだろうか。僕は授業についていくのが大変で、家での予習復習が欠かせなくなっているのだが。それにギターの練習もしたいしね。


 家に帰ると夕飯の支度が出来ていた。親父は公務員で定時上がりだから放課後まで部活をしていると既に帰宅をしている事が多い。遅く帰って来るのは、年に数回お袋が今は大事な時だからと俺に言ってくる期間ぐらいかな?

 仕事帰りの親父は疲れて居るのか休日と違ってテンションは低めだ。お袋も気を使って無理に親父には話しかけ無い。公務員て安定して楽なイメージあるけど違うのかな?係長って中間管理職の中でも一番大変だって聞くしそれが原因なのかな?

 詳しくは聞かなかったけれど、親父は妊娠しているお袋とお腹の僕を守るために安定した公務員を目指したんじゃないかと思う。実家から少し離れた場所に勤めているのも何件も受験し、受かったのが今働いて居る場所なのかもしれない。


 僕も彼女と共に歩くために就職を選ぶ日が来るのかな?まだ考えた事が無かったけれど、親父の様に家族を守れる道をきちんと選べる大人になりたいなと思った。

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