第17話 リゾラバ
楽器店でギターの取り置きをして貰い店を出た。
「なんかすぐに決まったね」
「持った感じが全然違ったんだよ」
「インスピレーション?」
「そう!そんな感じ!」
「ワタナベ先輩の言うこと正しかったんだねぇ」
「だねぇ」
ルンルンした気分になっている彼女に僕は腕を出した。前方に大学生ぐらいのカップルが腕を組んでいたからだ。
「?」
僕が腕を出した考えが分からなかったようだけど、僕が見ているものが分かったようで「えいっ」と言って腕を組んでくれた。
「嬉しい?」
「うん」
「私達カップルだね」
「そうだね」
「えへへ」
口に出して「えへへ」という人は彼女が始めてだけど、可愛いから許すことにした。
「これからどこに行くの?」
「行きたい所が無いなら1つだけ買いに行きたいものがある」
「なに?」
「ペアリング」
「うわっ!本気だっ!」
「高いものは買えないけどシルバーリングぐらいならね」
「へぇ〜」
「いつか本物を贈るけどね」
「わっ!気が早い!」
確かに気が早いけど、僕はあの両親の息子だ、色々早いことが起きてしまうかもしれない。
「ここだけの話だけど聞いてもらえる?」
「なになに?」
「僕って6月生まれなんだよ」
「結構近い」
「あぁ・・・それで僕の両親は高校の同級生なんだ」
「私たちみたいだねっ!」
「陸上部同士だったらしいんだ」
「おー!」
「3年の時2人ともインターハイに出場したらしいんだ・・・」
「アイ君の足が早いのは遺伝だったんだね!」
「会場の近くが綺麗な海だったらしいんだ」
「いいなぁ・・・」
「2人とも予選で早々敗退したんで大会終了ま引率教師の目を盗んで遊んだらしいんだ・・・海で・・・」
「悪い生徒だ!」
「それで結婚したのが卒業後すぐらしいんだ」
「うわっ!早いっ!」
「お袋が僕を産んだのは高校を卒業した年なんだ」
「結婚してすぐだぁ」
「僕の誕生日は6月なんだ・・・」
「???私は12月だよ???」
「お袋が俺を産んだのは高校を卒業した年なんだ・・・」
「・・・。」
「親父が言ったんだ・・・海がな・・・って・・・」
「・・・。」
彼女が上を見上げて組んでない方である左手の指を折って色々数え始めた。
そして指が小指と薬指中指が伸びて、人差し指と親指を折った状態の時にハッと気が付いたように恐る恐る僕の顔を向いた。
僕がコクンとうなづくと彼女は言った。
「早いよっ!夏だよっ!リゾラバだよっ!」
「親父とお袋はXデー以前から付き合ってたし、結婚してるからね?」
「えっ?でも・・・」
「だから「海がな・・・」らしいよ」
「海って怖いね・・・」
「そうだね・・・」
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