第16話 赤いギター

 ワタナベ先輩に紹介された楽器店に入ると中では軽快な洋楽が流れていた。それは、テレビやネット動画で聞いた事がある曲では無かった。こちらの業界では有名な曲なのか、それともただの店員の趣味なのか、それとも僕が無知なだけなのかは不明だけど、それらしい雰囲気はとても出る曲ではあった。


「うわぁ雰囲気あるねぇ」

「流れてる曲分かる?」

「わかんない」


 ジャンル違いとはいえ音楽に長い間携わってきた彼女が知らないという事は、僕の無知では無さそうだと思った。


 ギターを見て居て買わなきゃならないものを忘れてしまわないようにと最初にピックを買うことにした。

 ワタナベ先輩が使っていたものはトライアングルという種類のピックだったけど、僕に勧めていたのはティアドロップというピックだった。素材はナイロンとかメタルとか色んな種類があったけどワタナベ先輩が勧めていたセルロイドという素材のものを購入した。12枚づつセット売りが売っていたので8セットを違う色で購入した。

1枚100円ぐらいと聞いていたけど12枚で800円と予想していたよりは安く済んだ。

 ピックを入れるケースが売っていたけれど、100均で売っていそうなケースもあったので、それは買わず肩掛けバッグの中に入れた。


 エレキギターのコーナーを見ると色んな形や色のものがあった。丸みを帯びたものや角があるものなど色々だった。

 取りあえず初心者だし奇抜なものは避けた方が良いような気がした。店員に聞くと1番一般的のはSTというタイプのもので、確かに曲番組のギタリストが持っているものに似ている気がした。

 長く使えるものはどれですかと聞いたら、大事に使えばどれでも長持ちすると言われた。


 中古のギターコーナーがあったけど、何故か新品のものより高いものが多かった。何故かと聞いたら、ここにあるのが良いものだからと自信満々に言われてしまった。


 なんとなく中古コーナーを見ていると、4万円のギターがとても気になってしまった。店員に、持たせて貰っていいか聞いたらいいぞと言うので肩紐の長さを合わせて担がせて貰った。左利き用で逆にかけるものだと言われた。

 ワタナベ先輩から借りた奴より格段にしっくり来てしまった。別の左利き用のものもいくつか持たせて貰ったけれど殆ど同じ形なのにその4万のギター以上にしっくり来るものが無かった。

 ここまで来ると、もう決まったようなものだった。店主に取っておいて貰えないか頼んだら一ヶ月までなら出来ると言われた。僕はその赤いギターを取り置きして貰う事にした。

 今日此処に買いに来て良かった。そうでなければギターに左利き用があると気が付くのが遅れてワタナベ先輩から借りていたギターで練習し続けて居ただろうから。


 中古ギターは現在付いているストラップは付いていたけれどそれ以外は別売りだった。とりあえず必要そうなケース、スタンド、クロス、手入れ用薬品セット、フレットガード、カポタストヘッドホンを購入するとプラス3万円ぐらい用意する必要がありそうだ。お袋に頼んでお年玉貯金崩して貰わないといけないなぁとため息を付いた。

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