第15話 ティッシュ
あのあとファミレスの店員からおしぼりが2つ差し出され、僕と彼女は目を拭った。
どうやら横を向いていた彼女も涙を流していたらしい。
冷めた飲み物で冷えて固まったポテトを流し込んで僕たちはファミレスを出た。
彼女は少しだけ化粧をして来ていたようで化粧室に入っていった。戻って来た時にはすっかり涙のあとは消えていて、僕の好きな笑顔に成っていた。
ファミレスを出て楽器店に向かいながら彼女は僕に色々聞いて来た。
「私の事を好きになったの小学校の時なの?」
「うん」
「でも頑張りだしたのは本屋の時なの?」
「あの時好きだった気持ちが恋だって気が付いたんだよ」
「でも私はチビでメガネで胸も小さいよ?」
「可愛いだけだよ」
「運動も苦手だよ?」
「関係ないよ」
「性格が悪いかもよ?」
「そんなことないよ」
「アイ君みたくカッコよくないよ?」
「チビで丸坊主なのに?」
「うん・・・ずっとそう思ってたから・・・」
「えっ?」
「私・・・アイ君に憧れててた・・・」
「そうなの?」
「アイ君を好きな子って多かったんだよ?」
「そんなことないでしょ」
「私も好きだから分かったの」
「えっ!」
「あの時だったら勇気を出せれば告白出来たの」
「今は?」
「でもあの時みたいな自信は無いの・・・」
「うん・・・。」
「だから私じゃダメだと思うの・・・」
「そんなことないよ」
「アイ君は3年間学級委員に推薦されるすごい人なの・・・」
「押し付けられただけだよ」
「ピアノも上達しなくなったの・・・」
「好きならいいじゃん・・・」
「目が悪くなって絵も下手になったの・・・」
「上手いと思うけど・・・」
「告白された時とても嬉しかったの・・・」
「うん・・・」
「こんな私でいいの?」
「そんなアカホリさんが好きだよ」
「うん・・・」
彼女が泣き始めたのでアーケード街のベンチに座って彼女が泣き止むのを待った。
ハンカチを探したけど鼻水も出ていてグズグズと鼻を鳴らしている。ティッシュを差し出すと、彼女は受け取り少し遠慮がちに鼻をかんだ。
「用意が良いね」
きっちりかめて無いのか鼻声だった。
「こんな事もあろうかと」
親父が必要だからと入学式の後から、常に持つように言って渡して来るものだったけど、恥ずかしいので適当にごまかした。
「私を泣かす気だったの?」
そういう風にも捉えられるな・・・。
「いや僕が泣くと思って・・・」
「確かに泣いてたね」
自分でも予想外だったけどね。
「断られて泣くと思ってね・・・」
「OKしたのに泣かれたんだけど!?」
「自分でも驚いたよ」
「そ・・・そうなんだ・・・でもなんで断られると思ったの?」
「困ったような顔をしてたし・・・それに待たされたからね・・・」
「ごめんね?・・・待たせて・・・」
「ううん・・・いいよ・・OKしてくれたんだから・・・」
「うん・・・」
「僕たちずっと両思いだったんだね・・・」
「うん・・・」
「これからもよろしくね」
「うんっ!」
この瞬間から僕たちは両思いの彼氏彼女になった。
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