第9話 芋蔓
自身が、高校3年の夏休み中に仕込まれた子だと知った衝撃の日から1週間が過ぎた。いや本当は彼女に交際を申し込んだ日なんだけどね、もう両親の告白が衝撃的過ぎて吹っ飛んじゃったよ。
彼女からはまだ僕の告白に対する答えを聞いていない。
けれど表面的には平穏に過ごしている。新学期の教室で顔を合わせた日には、じっと目が合わせなければ彼女は赤面はしなくなって居たのでうまく顔を逸らせながら過ごしていた。
教室内の交友関係も少しづつ落ち着いてきた。僕と彼女は初日に友人となったアオシマとアサカワと過ごす事が多い。まぁアオシマが俺に絡んできて、アサカワが彼女に絡んできて、俺が彼女をハラハラ見ていると言う関係ではあるけれどとりあえず移動教室では共に移動し、昼飯は席を合わせて食べている。
今日の彼女とアサカワの話題はゴールデンウィークをどう過ごすかという内容だった、僕は彼女をデートに誘えないかと考えていたので、言うチャンスを図っていたけれど、彼女とアサカワがずっと絡んでいるのでなかなかタイミングが掴めていなかった。
そんな時アオシマが僕の肩に手を置いて「バンドやろうぜ!」とわけの分からない事を言ってきた。
アオシマの話をまとめると、こういう事だった。
元々アオシマはアメフトかレスリングでもしてそうな体型なのに、中学校の時はバンド活動をしていたそうだ。バンド活動って肉体労働だっけ?
アオシマのバンド仲間とは高校の進路が別れたために解散、だから高校で軽音部に所属して活動をしようと思っていたらしい。しかしアオシマが軽音部の部室に行くと部員は3年の先輩1人しかおらずこのままでは部員不足で廃部。3年の先輩も受験のため積極的に部員を募集する気は無いそうで廃部も仕方ないという感じだったそうだ。ちなみにアオシマはドラムをしていてギターやベースもある程度出来るらしい。何でも教えるから入ってくれという事を僕の肩に両手を乗せて頼んで来たと言うわけだ。手がデカくて重いってばよ。
イヌイの隣の席から「うほっ・・・今何でも・・・」という腐ったオーラが漂って来たけど関わりたくないので無視した。あれは関わってはいけない。
僕は部活動についてどうしようかと考えていた。体格はもう大きく上がりそうに無いし野球部に入っても雑用の3年間になってしまうだろう。足の速さを生かして陸上部と考えもしたけれど、選手として活躍出来るレベルかと言われると疑問符が付く。体が小さく軽いので長距離は練習すればある程度はいけるかもしれないけどストライドの短さで行き詰まる事は見えている。
僕は出来れば彼女と同じ活動をしたいと思っている。出来なくても放課後や休日の時間が合うような部に所属したい。それも難しければバイトでもしてお金を貯めて、週末ドーンと彼女とデートか出来ないかなと考えていた。
アオシマはイヌイも誘っていたけど「僕は漫研の活動が忙しい」と袖にされていた。イヌイとよくこそこそ会話している隣のイシガミが「腐腐腐」と笑っている。イヌイは腐に興味がなさそうなのに良くイシガミと話して居るのは、そっちの方で波長があっているのかと納得した。
アオシマは彼女やスマホを弄るのに忙しそうなアサカワも誘い始めた。
「嫌ぁよぉ」
「楽器はピアノか笛ぐらいしか」
あぁ・・・その断りはいけない、音楽に造詣がありますと言っているようなものだ。アオシマがバンッと音を立てて重そうな手で僕の机を叩き立ちあがる。
「ピアノが出来るならキーボードがあるし!」
そうなるよね・・・彼女はビクッと体を震わせると、僕とアサカワの顔を交互に見た。
彼女が僕に助けを求めている!
「おい!強引に誘うのは・・「アカっちがやるなら入るぅ」・」
「えっ?アサちゃん?・・・じゃあ私やろう「僕もやる!」かな・・・」
アオシマはニヤニヤしながら僕の肩に手を置いていた。
コイツ・・・彼女を入れたら芋蔓式に僕が入ると分かっていやがったな!?それにお前は手がデカくて重いんだよ!!
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