第8話 バレテーラ
赤くなったまま固まって居る彼女を、置いていくのもどうしたものかと考えたけど、僕が居たらいつまでもそのままな気がしたので「先に行くから」と言った。彼女はコクコクと頷いので教室を出た。
校舎を出て校門の方に行くと、記念撮影をしている生徒たちがまだ多く居た。大きなバッグを背負った親父と着物姿のお袋もそこに居て、その隣にいる彼女の両親と話し込んでいた。どうせこれからもよろしくお願いしますとでも言っているのだろう。
両親達のもとに行くと、親父に「アカホリさんの娘さんは?」と聞かれた、教室で別れたと言ったら怪訝そうな顔をされた。お袋が「どうせならら2家族揃って写真を撮りましょう」と言ったので彼女を待つことになってしまった。それなら彼女を落ち着かせて一緒に出て来れば良かったと思った。
しばらく待っていると校舎から少し足元をフラつかせながら歩いてくる彼女が見えた。それを不審に思ったらしい彼女の両親が校門で待たずに近づいていく。親父が「何かしたのか?」と聞いてくるけど話したく無いので「なにも・・・」と言った。
彼女の両親が彼女を連れて来て「大丈夫なようです」と言った。彼女は真っ赤な顔をして俯いていて大丈夫そうには見えない。
とりあえず校門で写真を撮ろうと言うことになり、見送りをしている先生らしきスーツ姿の男性に写真を撮ってもらう事となった。
彼女の母親とお袋のスマホでの撮影はすぐ終わったけれど、親父の一眼レフカメラでの撮影は説明が大変で時間がかかっていた。
ふと彼女の顔を見ると、彼女も僕を見ていて目が合った事でみるみる顔が赤くなっていった。これは色々いけないと思い僕はすぐに視線を外した。
親父の一眼レフカメラでの撮影が無事に終わり、各々家族だけの写真を撮って帰る事になった。親父は彼女の家族も一眼レフカメラで撮っていて写真をプリントアウトしたら贈りますよと言って笑っていた。
お袋から耳元で小さな声で「告白でもしたの?」と言った。何でバレた!?と思い、お袋の顔を見ると小さな声で「一緒に通いたいから頑張ったんでしょ?」と言われた。思わず目を見開いてしまうと今度は普通の声で「あの人と同じなのよ・・・」と言って親父を見た。
彼女の家族と一緒にバスに乗って帰った。僕と彼女は会話どころかまともに顔も合わせられないでいた。彼女の家族が一駅先に降り、僕達も次の駅で降りた。
親父が僕に「うまくやれよ」と言ってきた。「どういう意味?」と親父の顔を見たら「俺の息子だからな・・・」と言って僕の坊主頭をガシガシとなで始めた。僕が「ヤメロ!」と言って振りはらうと。「避妊だけはしっかりしろよ」と言ってきた。「はぁ?」と言うと「海がな・・・」と言ってあと言葉を濁した。
お袋が「私があんたを産んだのは私が高校卒業した年よ」と言った。僕の誕生日は6月だ。
「超フライングしてんじゃねーか!!」
僕は思わず叫んでしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます