第7話 入学

 アサカワは彼女を抱いて頭を撫でている。


「この子可愛い欲しいぃ。それにいい匂いぃ」


 と言っているのでペット代わりのようだ。だが彼女は僕のものだ。予定だけどさ・・・だから前にはやらん!


 アオシマは僕の肩に手を置きニヤニヤしてそれを見ている。

体が大きいからか妙に手がデカくて重くて外せそうにない。


 そんな事をしているうち案内役らしい女子生徒が入って来た、


「各自荷物を机の中か後ろのロッカーに置いたら自分に従って体育館へ来るように。」


 案内役の女生徒の後ろからクラスメイト達と共にザワザワと騒ぎながらゾロゾロとついて行った。


「行こうぜ」

「あぁ・・・」


 僕達「ア」で始まる苗字の4人は固まって歩いている。

アサカワが彼女にベタベタし、僕がそれをハラハラ見ていて、アオシマがニヤニヤ付いて来るといった感じだけど。


「ねぇ・・・連絡先交換しよぉ?」

「う・・・うん・・・」


 体育館に付くとこちらも出席番号順に席が作られていた。男女2列なの左から僕、アオシマ、彼女、アサカワの順だったので隣同士等では無かった。アオシマのデカい体のせいで彼女が隠れて良く見えない。「前の席じゃ無くても大事なものが見えなくなるじゃねーか!」と叫びたくなる気持ちを我慢して入学式を受けていた。


 新入生代表は彼女では無かった。そこまでは頭が良いというわけではないのだろう。

 僕は小学校の頃は、彼女の事はいつの先頭にいるスゴいと人だと思っていた。さらに自分の事も世界の先頭を歩き続けると考えてた猛烈な勘違い野郎だった。彼女が公立中学校に居ない事も、スゴいから私立中学に行けたんだと思っていた。けれど彼女はいつも先頭を歩く人ではないとここで改めて思った。

 出来れば僕と同じ位置、先頭なんか要らないから隣を歩いてくれないかと思っていた。


 入学式が終わり教室に戻ると担任という男性から今日は荷物を持ったらそのまま帰って良いと言われた。それと新学期最初の日の朝のホームルームで自己紹介をさせるから考えて置くように言われた。


 解散と言われたので各々自由に帰りだした。アオシマやアサカワもまた新学期でと言ってスマホの連絡先を交換をしあってから足早に帰って行った。

 僕も彼女も両親が待っている。だけど僕は彼女に話したい事があったのでお願いして人が居なくなるまで待ってもらった。


クラスメイト全員が帰ったあと、僕は頭を下げて彼女に言った。


「小学校の時から好きだった!付き合って欲しい!」


 彼女は何も答えなかった。下げた頭からは彼女の顔は見えない。どんな顔をさせてしまっているのだろうか。木製の床と金属のパイプで出来た机と椅子の足とスカートから伸びる彼女の足元しか見えない。

別のクラスも解散となったのかザワザワと大勢の生徒の話し声が聞こえてくる。


「いつか答えを欲しい」


 そう言って僕は顔をあげ彼女の顔を見た。

 彼女の顔は本当にどうしようもないぐらい真っ赤になっていて体が少し震えていた。

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