第5話 同じ色のリボン
入学式の日、僕はとても緊張していた。
僕は彼女が合格しているかどうか調べた訳では無いけれど信じていた。合格発表の会場では見かけ無かったけれど、頭が良く真面目で頑張り屋の彼女が不合格なんてあるわけがない。
入学式に両親と一緒に行くのは気恥ずかしかったので先に行って貰った。体育館で待つ保護者は後だけど、いい場所を確保したいとどこから持ってきたのか一眼レフカメラが入ったバッグを肩にかけ張り切っている親父と出かけて行った。これまたどこから取り出したのか分からない着物を着たお袋と仲良さそうにいそいそと出かける様子は、両親だけど少し引いたのは仕方ないと思う。
僕は1本分バスを遅らせるぐらいの後に家を出て停留所に向かった。これから3年間毎日の様にこのバスに乗る事になる。もし彼女もバス通学ならば、時間を合わせれば1つ先の停留所で合流する事が出来る。なんならその停留所ぐらいまでなら毎日歩いて通ったって良い。
残念ながら彼女が乗り込んで来ることは無く、バスは目的地に到着した。
入学式前という事でピカピカの制服を着た学生とチラホラと両親と見られる同伴者が門の前で記念撮影をしていた。ほとんどがスマホで撮影しており、うちの親父のように一眼レフカメラの入ったバッグを抱えているような人は居なかった。
記念撮影をしている人を避け校門にから中に入って行くとさらに多くの生徒でごった返し話し声がザワザワと聞こえた。同伴者連れも多く、その中に父親もいる事はその大きな目立つバッグのせいですぐに分かった。
校門の受付を済ませ胸に付けるリボンを生徒会所属する上級生らしい女生徒に付けて貰った。
男の僕より背が高くて少し屈まれたのが少し、いやかなり悔しい。
下駄箱と教室の位置が書かれた紙が手渡されたのでそれに従い向うように言われる。
親父をスルーするわけにも行かず、近くに寄って声をかけると、親父の体の影からあの彼女がひょっこり顔を覗かせた。どうやらお袋と彼女の母親は知り合いらしい。
彼女の父親と話す親父の話からすると、お袋と彼女の母親は小学校の頃のPTAの一緒の役員で、良く顔を合わる関係だったらしい。今でも買い物とかで見かけると挨拶し合う程度の関係は続いていたらしく、入学式で鉢合わせしたものだから話し込んでしまったという感じだと分かった。
彼女の両親も僕の両親も少し小柄だけどそこまで背が低い訳では無い。僕と彼女だけギュッと何かの遺伝子が集約したかのように背が低い感じだ。
僕が彼女に久しぶりと挨拶しあったあとは両親達の話を黙って聞いていた。彼女の胸のリボンを見ると同じ色をしていた。僕は心の中で、ここ一年では彼女と再会した日と学業祈願した初詣と受験の当日ぐらいしか祈らなかった神に感謝を捧げつつガッツポーズをした。
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