第3話 恋と受験勉強
僕は初恋を自覚してしまった。
彼女と一緒に居たい、あの甘い匂いを嗅ぎたい、元気な声を聞きたい、あの柔らかそうな指に触れたい。
猛烈に彼女と同じ高校を目指したくなっていた。変な噂のあるような高校に通い、あのくだらない教室の様な場所で3年間過ごすかもと思ったら耐えられそうに無かった。僕は人生の全てを賭けてでもその未来を変えなければ一生後悔すると思った。
僕は家に帰り両親に名門高校であるアイコウ学園にどうしても通いたいから予備校に通わせてくれと懇願した。
両親は渋っていたけれど、僕の必死の説得に根負けして通わせてくれるようになった。
あえて彼女とは違う離れた予備校を選んだ、もし会ってしまえば彼女を意識してしまうし、楽しい時間の想像に流されダメになると思ったからだ。
僕は予備校に真面目に通った、分からない事は講師に質問をしまくった。
学校には通い続けたけれど教室には行かずすぐに図書館で自習をした。過去にあった他校でのイジメ問題で、保健室登校や図書館登校は一応認められていた。学校に行くとすぐに静寂が支配する図書室に行きそこでひたすら受験テクニックを勉強した。
教室での授業はあまり集中は出来なかったけど、ノートは真面目にとり積極的に授業は受けていたので最低限の知識は頭に残っていた。後は抜け穴になっている部分の穴埋めと肉付け作業を行うだけだと思った。誰も来ない静かな図書館は自習するには適した環境だった。
自称担任が放課後に帰ろうとする僕を呼び止め、授業のボイコットする事について注意してきた。クラスで騒いでいるやつには注意しないくせに、真面目に授業受けてた僕に注意しにくるコイツを心の底から軽蔑した。僕が居ないせいでフォロー仕切れない部分をさせたいのだろうと思った。
僕はコイツを担任なんて思わなく無っていたので、クラスで騒いでるクズ共をどうにかしないなら行かないと言って突っぱねた。さらに、人生賭けて頑張ってる僕の邪魔をするならお前を苦しませた上で殺してやると言って睨みつけた。自称担任とやらは今まで良い子だった僕の思わぬ言葉に口をパクパクさせて何も言い返して来なかった。そして二度と学校で呼び止められる事は無かった。
学校に通うだけで授業に出ない日を2学期の間はずっと続けた。テストも保健室で受けられたので順位が格段に向上したので成績表自体は維持できた。
参加しない実技系の成績は落ちたけど心配はしていなかった。少年野球の監督経由で紹介して貰ったアイコウ学園の関係者に、主要教科の成績が最低限あれば本番のテストだけで殆ど結果が決まると聞いていたからだ。
放課後になり帰ろうとする僕を、クラスのクズ共が揶揄してきたけれど、僕は騒音として無視した。憤慨して追いかけて来るやつもいたけれど真面目に3年間野球部に所属し鍛えられた足に追いつける奴はいなかった。上履きも靴も下駄箱には残さず家から持参し、校内へも袋に入れて手元においた。だから隠される恐れを感じる事は無く安心して勉強に集中出来た。。
受験には2学期までの成績しか反映されないと知っていたので3学期は学校に通う事すらボイコットをした。願書と共に内申書は既に提出されたと聞かされている。義務教育だし出席日数的には卒業証書を貰う事が出来るので問題は無かった。
受験テクニックをメインに磨いたので知識の抜けはそれなりに残ったと思う、けれど過去問題を中心に勉強する事で必要な知識は入っていると思った。分からない事は予備校教師にしつこく聞きまくったおかげで問題を読めばどれぐらいの難易度かは分かるようになった。予備校の傾向と対策はとても役に立ってくれた。20年分の過去問とその間に予備校で作られた予想問題での自主的な模擬テストが出来たのだから。そしていつの間にか、充分に合格圏に入れるぐらいの正答率を出せるようになっていたのだから。
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