第二十四話 薬士 其の一
ここが
俺は目の前にある大きな門の全体に顔を
もしもこの名前が客寄せのために付けたものでないのなら、ここの主人はよほど薬草や薬の知識、それと
それはこの薬屋が建てられていた立地からも
わざと街の中心地から離れた場所に建てたということは、
実際にそんな
敷地面積はかなりのものだ。
そんなことを考えていると、俺の隣にいたアリシアが「全体的にかなり
「看板も汚れているばかりか少しズレているし、門のいたるところや
無理もない、と俺は思った。
もしもこの立派な外観の薬屋を一代で築き上げたとしたら、それこそずっと客が
だが、薬屋の敷地内に妖魔が住み始めたというのならば話は別だ。
どれだけ効き目の高い薬を扱う
そして客が
そうなると建物の
まあ、それはさておき。
「とにかく、まずは依頼人である
俺がそう言うと、アリシアは「大丈夫?」と不安な表情を見せる。
「その凶悪な妖魔はこの建物の敷地内にいるのよね? 不用意に入っていきなり襲われでもしたら……」
「とは言っても、こんな入り口で
それに、と俺は門の奥を
「この敷地内からは、不思議なことに妖魔が発する妖気がまったく感じられないんだよな」
嘘ではなかった。
わざわざ〈
それどころか、この敷地内からはどこか
するとアリシアも俺と同じく門の奥を
「もしかして、その妖魔はもうここから逃げ去ってしまったとか?」
「あり得るな……ただ、せっかくこんな
しようか、と二の句を
「
と、後方から声を掛けられた。
俺とアリシアはほぼ同時に振り向く。
いつの間にか、そこには13、4歳ぐらいの少年が立っていた。
背丈は5
切り
顔立ちは普通よりも整っている反面、野性味あふれる勝気な子猫を想像させる少年だった。
俺は少年の全身に視線を
山菜を
少年は背中に
そんな少年は俺たちをキッと
「もう1度だけ
このとき、俺は
この子は男じゃなくて女だ。
独特な言葉使いの少女は、
返答次第では斬り掛かって来るつもりだろう。
それほど今の少女の気は
だとすると
もしかすると、見習いの
などと少女の正体を見極めていた俺の代わりに、何とか少女の気を静めさそうとアリシアが慌てて事情を説明してくれた。
「ちょっと待って。私たちは怪しい者じゃない。
「
少女は
同時に短刀の
そんな少女を
さて、どうするか。
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