第十五話 真の実力
「オルアアアアアアアアア――――ッ!」
試合開始の合図と同時に、
表情を険しくさせ、声を荒げているのは
そうすれば女であるアリシアさんが、自分の迫力に負けて身をすくませると思ったに違いない。
しかし、アリシアさんの顔や身体には
あるのは、静かな闘志と力強い決意のみ。
やがて2人の間合いがあっという間に
まるで本気で頭を
それでもアリシアさんはどこまでも冷静だった。
「フッ」
と、アリシアさんは短い呼吸とともに真下から
ガンッ!
周囲に
直後、見物人たちは息を
アリシアさんに打ち負けた
だが、見物人たちが驚いたのはそこではない。
いつの間にか、アリシアさんが
「勝負あり……ですね?」
アリシアさんの言葉を聞いて、ようやく見物人たちは我に返った。
「おい、今の見えたか?」
「いいや、全然見えなかった」
「俺もだ。
「まさか……本人は使えないと言っていたが、あの女は異国の魔法とやらを使ったんじゃねえのか? それとも
違う、と俺は心中で否定した。
あれは魔法でも
肉体を
ただし
アリシアさんはスッと剣を引くと、衝撃で固まっていた
それは誰もが納得のいく勝負ありだった。
けれども、たった1人だけ納得のいっていない人間がいた。
「この異国人のクソ女があああああああああ――――ッ!」
次の瞬間、
その
「そっちがその気なら、ここからはもう試合ではありませんよ」
今のアリシアさんは、
こうなることを予測していたのだろう。
一気に踏み込んだアリシアさんは、両手を広げていた
「ぐがあッ!」
やがて全身の急所を
その姿は牛車に引かれた
それはさておき。
やがてしんと静まり返っていた中、
「しょ、勝負あり! 勝者、アリシア・ルーデンベルグ!」
再び中庭に熱気が
集まった
俺はアリシアさんに
「素晴らしかったです、アリシアさん。以前の言葉は完全に取り消しますよ。今のあなたは
すよ、と言葉を続けようとしたときだ。
アリシアさんは俺にガバッと抱き着いてきた。
その両目には熱い涙が浮かんでいる。
「ありがとう。本当にありがとう。あなたのお陰で私は本来の力を取り戻せました。あなたは命の恩人……いえ、それ以上の存在です」
このとき、俺はアリシアさんを振りほどくことができなかった。
密着したアリシアさんの身体からは、体温以上にこれまでの
「良かった。そこまで言われると、俺も治したかいがあったというものです」
と、俺が満面の笑みを浮かべた直後だ。
ぴくりと俺の
後方から嫌な〝気〟が
「まだ、終わっちゃいねえ!」
俺は顔だけを振り向かせる。
そこには、上半身を起こした
そしてその見物人を殴りつけて剣を奪うと、
「くだらねえ
これにはアリシアさんも少なからず動揺していた。
まさか木剣をまともに受けて立ち上がるとは思わなかったのだろう。
しかし、俺は別なことを考えていた。
おそらく、
だとすれば、木剣を受けても立ち上がる耐久力にも納得がいく。
そんなことを考えていると、
確実にアリシアさんを殺すつもりだ。
ならば、これはもう
俺はアリシアさんから離れて
「どけ、小僧! てめえもぶっ殺されてえか!」
俺は右拳を固く握り締めた。
「お前みたいな最低限の道理すらもわきまえていない奴は
やがて距離を
だが俺は冷静に剣の軌道を見極め、
と同時に俺は
ドンッ!
何かが爆発したような衝撃音とともに、
口内からは
再び静まり返った中庭。
そんな中、俺の後方にいたアリシアさんが
「
はい、と俺は答えた。
「仕える主人を無くした……ただの第五級の
そう言った俺の目の前には、ぴくりとも動かない
もう
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