第十二話 殺し屋
「この役立たずが!」
そしてあまりの怒りを
ガチャン、と部屋中に甲高い音が鳴った。
「も、申し訳ありません!」
「あれだけ
この
「貴様、どうせ安い金で
ビクッと
「馬鹿が……1番最後に追い出した
「そ、その件につきましては深く反省しておりまして……」
ふん、とわしは鼻で笑った。
「反省なんぞは大道芸の猿でも出来るわ。大事なのはどう落とし前をつけるかだ」
わしはギロリと
「まさか、貴様は自分の失敗の報告だけをしに来たわけではないだろうな?」
「も、もちろんです」
「では、どうするつもりだ?」
「正式な殺し屋を差し向けます。それも
「
わしは
しかし――。
わしの手が
おかしい。
たとえ
などとわしが思ったときだ。
「ほう、中々に上等な酒だ。今の俺には飲めないのが口惜しい」
と、後方から聞き慣れない男の声が聞こえてきた。
わしはあまりのことに椅子から飛び上がり、慌てて身体ごと振り返る。
「――――ッ!」
そして、今度こそ本当に
いつの間にかそこには、
わしは驚きながらも、黒ずくめの男の全身に視線を
目元だけが見えるように漆黒の
体格はそれほど立派ではない。
どちらかと言えば
しかし、そんなことはどうでもよかった。
黒ずくめの男を見てから、全身の肌の
まるで生きた死体のような不気味さが伝わってくる。
それでも
「何だ、貴様は! どこから入ってきた!」
この当主の部屋は屋敷の2階にあり、開けっ放しの窓はついているものの、窓の外には足場になるような屋根などは一切ない。
それでも窓から侵入しようとするのならば、
だが、そんなことをされた気配も音もまったくなかった。
まさか、この男は幽霊のように壁をすり抜けて部屋に入ってきたのだろうか?
そんなことを考えたとき、わしはもっと重要なことを聞くべきだと気づいた。
「いや、それよりも……貴様は一体何者だ!」
黒ずくめの男は答えない。
代わりに
わしは顔だけを
「その者の名は
黒ずくめの男――
「驚かせたようで悪かったな。どうやってこの部屋に入ったかは教えられないが、後ろから気配を殺して近づくのが
何て不気味な殺し屋だ。
わしは冷静さを取り戻したように
「
「俺の顔が見たいと?」
「当たり前だ。互いに顔を見知っているからこその契約だろうが」
「そんなに見たいのなら見せてやろう」
そう言うと
ひいっ、と
一方のわしは悲鳴を上げることも出来なかった。
こいつは人間に化けている妖魔なのか?
ふとそんなことを思ったとき、
同時に
「俺は妖魔なんかではない。少しばかり
それよりも、と
「
「う、うむ……」
わしは
「警備隊長だった
と、口にした直後だった。
「
「しかも、その
わしはたじろぎながらも、「確か今年で18だ」と答える。
「あと1つ聞きたい。その
「あ、ああ……持っている」
わしの返事を聞くなり、
やがて
「これから受ける依頼――特に
わしは思いがけない
「一体、なぜだ?」
「知れたこと」
「
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