第十話 保健功
「う~ん……」
ほどしばらくすると、アリシアさんの両目がゆっくりと開かれた。
目覚めたばかりのアリシアさんは、軽く混乱していたのだろう。
一方の俺は、
「腹は痛くないですか? かなり手加減したので大丈夫だと思いますが、少しでも吐き気や頭痛があったら言ってください」
「りゅ、
俺は意識を取り戻したアリシアさんと目が合った。
「……はッ!」
直後、アリシアさんは完全に目が覚めて思い出したのだろう。
意識を無くすまでに自分が何をしようとして、そして何をされたのかを――。
「私はまったく歯が立たなかったのですね」
アリシアさんは無傷の俺を見つめながら
「そうでもありません。最後の攻撃は中々のものでした」
「お
「いいえ、俺は本当にそう思ったから言ったんです。それに、あなたの剣は俺の身体こそ傷つけられなかったものの、ちゃんと俺の衣服には傷をつけました」
そう言うと、俺は斬撃を受け止めた左腕をアリシアさんに見せつけた。
正確には、アリシアさんの剣を受け止めた部分の衣服をだ。
左腕の部分の衣服には、斬られた証拠として
「約束はしっかりと守ります。
「それは目付け役の
「……はい」
こればかりは、嘘を言うわけにはいかなかった。
確かに
ただし、例外はあった。
アリシアさんが最低等級の第5級から上を目指さないのなら話は別だ。
それなら今のアリシアさんでも何とかやっていけるだろう。
しかし、アリシアさんがその程度で満足するはずがないことも分かっていた。
おそらく、アリシアさんはもっと上の等級を目指すはずだ。
それだけではない。
同時に集められる情報も広く深くなっていく。
そして、アリシアさんが欲しいのは上の等級の
だが、今のアリシアさんでは上の等級の
もしも本当にアリシアさんが上の等級の
「アリシアさん、俺があなたの身体を元に戻すと言ったらどうしますか?」
「私の身体を元に戻す?」
アリシアさんは頭上に
「俺はあなたが異国人だから
どきり、とアリシアさんから聞こえたような気がした。
それほどアリシアさんの表情には、驚きの色が浮かんでいる。
「ですが、その原因がよく分からない。病気とも怪我とも違うような……もしかすると、誰かから〝呪い〟のようなものを受けたとか?」
どちらにせよ、と俺は言葉を続けた。
「実際に肉体を
「み、
俺は真剣な顔で「そうです」と
「絶対にとは言い切れませんが、もしかすると俺はアリシアさんの身体を元の
「
どうして自分の身体のことを見抜かれたのだろう?
この人は一度も正式な仕事を受けたことがない、最低等級の
そんなことをアリシアさんは考えているんだろうな。
まあ、無理もない。
俺は数々の〈
武術と
そんな
これはどこの国の生まれや、どんな人種かはまったく関係ない。
それこそ西方の異国だろうと
そうなると、アリシアさんはひたすら
でなければ、肉体の不調のある程度は自分で何とかできるはず。
もしくは人体の
だが、もしも異国の1流の
そんなことを考えながら、俺はアリシアさんの問いに答える。
「今の俺は、単なる主人と記憶を無くした
どうしますか、と俺はアリシアさんに
「俺を信じて、俺に身体を
普通の女性ならばいくら目付け役の
しかし――。
「分かりました。私の身体を調べてください」
アリシアさんは大きく首を縦に振った。
「ただし、もしもあなたから少しでも欲情した気配を感じたときは覚悟してくださいね」
ふっ、と俺は笑った。
「もちろんです。そのときは衣服とは言わず、黙って左腕を丸ごとあなたに差し出しますよ」
こうして俺は、アリシアさんの身体を
そして覚悟を決めたアリシアさんは、俺の指示に従って上半身の衣服を1枚ずつ脱いでいく。
さて、どうなるかな。
俺は久しぶりの
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