第八話 誤解ゆえに
しかし、その
アリシアさんは一刻も早く
それから
俺とアリシアさんは、
これから
すでに日は落ちて、周囲は闇に包まれている。
「これで私は
ずっと無言だったアリシアさんが
俺は
そうです、と笑顔で答えるのは簡単だった。
現にアリシアさんは標的の
しかし――。
「今のあなたには無理です」
俺は
「なっ!」
アリシアさんはガバッと立ち上がり、信じられないといった表情を浮かべる。
「そ、それは一体どういうことですか! 私は試験の
このとき、俺はアリシアさんが少し言い
正直なところ、アリシアさん自身も気づいていたのだろう。
とはいえ、俺のアリシアさんに対する意見は変わらない。
「そのままの意味です。アリシアさん、今のあなたの実力では
俺はアリシアさんの視線を受け止めながら言った。
「だから、それはどうしてだと
今にも飛び掛かってきそうな勢いのアリシアさんに対して、俺は冷静な口調で「今のあなたは弱いからです」と答える。
「……あなたも他の
「いいえ、急に本性を出すなんて他の
「それは違います。
嘘をつかないで下さい、とアリシアさんは高らかに
「そう言いながら、実際は適当な嘘を並べ立てて私の試験を不合格にするつもりなんでしょう!」
アリシアさんは
「あなたが
だからこそ、とアリシアさんは力強く言葉を続けた。
「あなたの優しさが本当に身に
そう言うとアリシアさんは、自身の長剣の
「俺を斬るつもりですか?」
「それは、あなたの返答次第です」
アリシアさんはゆっくりと
「私だってこんな真似はしたくありません。ですが、私はこの国でやらなければならないことがある。そして、その目的を果たすためには
だから、とアリシアさんは長剣の切っ先を俺に突きつける。
「
バチバチと
長剣の切っ先が
それを確認するだけで十分だった。
アリシアさんは俺を斬るつもりなど
だが、表向きでもこうしなければならないほど追い詰められているのだろう。
それほどアリシアさんは何か大きな目的のために動いているようだ。
だとすると、アリシアさんが
単なる腕を
それこそ自分の命を
だが
すなわち情報だ。
それも一般人には知ることができない裏の情報に違いない。
このとき、俺の頭の中に
アリシアさんがこの国に来た理由で
けれども、何にせよアリシアさんが
少なくとも肉体が壊れている、今のアリシアさんが
今の状態のアリシアさんならば、近い将来において妖魔に返り討ちに遭って殺されのがオチだからだ。
ただし、もしもアリシアさんの肉体が特別な事情で壊れているのなら話は別だ。
駄目元でアリシアさんに
俺が精気を応用したあの力――〈
ただ、そのためにはアリシアさんの肉体を詳しく
では、それを今のアリシアさんに伝えて受け入れてくれるだろうか?
俺は心中で頭を左右に振った。
答えは
いきなり赤の他人から「今のあなたの身体は壊れています。なので俺が治るかどうか
もしも
それに俺自身も、誰に対してでもそんな考えに
店の修理代に
そんなことを考えていると、アリシアさんは「なぜ、ずっと黙っているのですか!」と声を荒げた。
「もしかして、私が斬らないと
などと言い放ったアリシアさんを見て、ふと俺の脳裏に
同時に俺はゆっくりと立ち上がる。
そして――。
分かりました、と俺は落ち着いた声で伝えた。
「俺を斬れるのなら、どうぞ斬ってみてください。たとえ身体が無理でも服を斬ることができたならば、
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