第7話 白夜とアルカードとお偉いさん。
「白夜を召喚してからマスコミの情報が良く入るね。」
「あまり良いんだ情報は無いのだがな。」
「やっぱダンジョンで死者がどう責任とるんだとかそんなんばっかりだよ。」
既にテレビなどで「民間人が死んだら責任を誰が取るんだ!?」とか言う人は何人も居た。
が、民間人はどちらかと言うとダンジョンを歓迎する者が多かった。理由は当然新たな鉱石に病気の治療に使える物。そしてそれ以外にも何か大発見があるんじゃないかと言う期待。
そして、ダンジョンが現在日本を含む6カ国にしか無いと言う点。景気がよろしく無い日本に取ってはこのダンジョンはチャンスでもあった。
「マスコミが騒ぐのは想像通りだけど、いざテレビ ?で観たりすると呆れるね。まあそのダンジョンを造ってるのが僕なんだけどさ。」
「まあ余程暇なのであろうよ」
「そのうちに騒ぎが激化して暴動が起きたりしてね。」
「もしそうなった場合樹様はどうするのですか?」
「アルカードと白夜に対処してもらうよ。」
「うむ、その時は任せよ。」
「僕自身には何の力もないけど、だからと言ってダンジョンマスターなんて言うものになったんだ。黙って観てるつもりはないよ。」
「だけど樹様は大丈夫なのか?」
「何が?」
「いや、樹様に借りたゲームや漫画とかアニメ観てると何となく日本人は皆のだめに自分を犠牲にするのがすきそうだからな。」
「たしかにそれは私も思いました。」
「ははは。大丈夫だよ。言った通り僕は黙って観てる人間になるつもりないよ。その時は嫌われても良いよ。多少強引でも押し通すつもりでやるさ。」
そうしなければ良いように利用されるだろう。「あれをもっと出せるようにしろ。」「むしろお前が直接出せば良い。」とかそんな風になる気がする。仮に僕がダンジョンマスターではないただの一般人だったら目の前にダンジョンマスターが居たらきっと言ってしまうと思うから。
「せっかくたった一度の人生でダンジョンマスターだなんて者になったんだからある程度好きにやるよ。別に世界を滅ぼしたいわけじゃないけど、必要とあればやる。まあ無理はしないから安心してよ。」
「わかりました。」
「うむわかった。言われればすぐに動くから遠慮なく言ってくれ。」
「私にも遠慮しないでくださいね。」
「ああ勿論。」
「いやーそれにしても、案外魔法系の【スキル】はまだ誰も取れてないねえ。」
「始まったばかりだからな。」
「魔法系が取れたらダンジョンも地球も湧き立ちますね。」
「たぶん最初に取れた人は英雄でもなったかのように持て囃されるよ。」
今現在取られている【スキル】は武器を扱う者や体力が増えるだとか基礎の様な者が多い。これは勿論まだ一般人からしてみればダンジョンは始まったばかりだからだ。少しすれば魔法系も取られるだろう。
ちなみに僕はダンジョンマスターの特権とも言うべきやつで好きな【スキル】が取れる。そして既に3つの【スキル】取っている。
【結界魔法】【反射】
ユキと【結界魔法】は被っているが、もしかしたら場合によっては別々の時もあるだろう。【反射】は文字通り相手の攻撃を反射する。
これで地球で出歩いても問題がない。
管理者に外で【スキル】を使えるかと聞いた時に使え無いと言って居た。が、どうやらそれはダンジョンマスターが召喚した者には関係がない。ダンジョンマスターは地球の国々を攻撃出来る。これまでにもアルカードや白夜は外で活動する際【スキル】を使って居る。
非常に、非常に面倒臭いが総理含めお偉いさんとはしっかり話合った方が良いだろう。もしもの時のために。
「と言うことでアルカード、白夜に伝えて。」
「うむ。我じゃなくて良いのだな?。」
「うん。白夜の顔見せの意味も兼ねてね。」
「了解した。」
「とりあえずは、ダンジョンマスターとその配下の攻撃はシールド張ってる間は問題無い事。もしかしたら他国でダンジョンマスターの攻撃が行われるかもしれないから注意すること。この2つを言っておいて欲しい。」
「その2つだけで良いのか?。」
「他は思い浮かばないんだよね。」
「うむ、わかった。では白夜に伝えるとしよう。」
その後白夜に総理の元へと言って貰ったがやはり大層驚いていた。コウモリからアルカードが現れる事はあったが、それとは別の者が来るとは思わなかったようだ。
そして僕はアルカードのコウモリを通じて白夜と総理の話を聞いていた。
「何か盗み聞きしてる気分。」
「間違ってない気もしますが。」
「まあコウモリが居る事は分かってるのだから良いではないか?。」
「でもコウモリ通じてこうして会話聞けるし、なんならコウモリ使って会話が出来ることも知らないでしょ?。」
「言われてみれば、今までは我が行っていたからな。」
「ほら。じゃあやっぱ盗み聞きだね。」
内心驚きっぱなしだろう総理とは裏腹に僕達は和気あいあいとしていた。まあ総理からしたら、僕らはどちらかと言えば管理者側に見えるだろうし仕方がないか。
そして総理もやはりダンジョンマスターとその配下なら外で【スキル】を、いや国を攻撃出来る事には懸念があるようだった。まあシールドの事を伝えるとあからさまに安堵していたけども。
しかし、シールドは現代兵器には無効なのでそこは勘違いしないでくれと伝えて貰うと残念がっていた。気持ちは分かるよ。
そして当然総理からも質問されていた。
ダンジョン内に人が国を造って居るがあれは何だ?実在するのか?仮想現実なのか?と言う質問は困った。非常に困った。僕からすると血が出て1人1人性格も何もかも違うから人間と思い観ているけどこうして聞かれると困る。だからアルカードを通じて白夜には管理者の与えたダンジョンマスターが造った生命体だ、と伝えてもらった。
と言うか僕ら地球の者も管理者の造った生命体かもしれない。知らんけど。
話し合いは進みダンジョン内から持ち帰った物の税金だなんだの話になったけど、正直僕は頭がよろしく無いのでユキとアルカードと白夜に任せることにした。
ユキが眉尻を下げながら「樹様も決められた方が良いと思うのですが……。」と言ってきたけど税金は難しいんだ。
唯一税金の話で僕が言った要望は「民間人がしっかりダンジョンに入っても損が無いよう上手くやれ。」だった。
まあもし調子乗って取りまくったら「絞り取りすぎてダンジョン運営に支障をきたす様な事になったらアルカードの催眠魔法使うなり白夜使うなりなんなりして分からせる。」って事にしたけども。
ふとニュースで見た海外のダンジョンについて聞いて貰ったが、やっぱり総理もあまり把握していないようだった。
「やはり新しい素材等が手に入り研究は始まってるようなのですが、どうにも防備が厳重で分からないのです。」
とのことだ。やはり海外の国も日本同様なようだ。日本はその点スパイに対してザルだから心配事ではある。総理にその事について言うと何とも言えない顔をしていた。
何だかんだと話し合いは続いたが段々面倒臭くなって配下に任せる事にした。ユキは呆れていたけど。
「樹様、いくらなんでもそれは……。」
「いやだって難しいよ。それに話してて分かったけどユキもアルカードも白夜も僕より賢いよ。絶対任せた方がダンジョンにも日本にも良いよ?。」
「では私達で話進めて本当に構わないのですか?」
「うん。僕の考えは話し合いの前にも多少話したでしょ?。」
「えっと、良いように利用されるつもりは無い、ですよね?。」
「うん。後は今の総理との話し合いでも言ったりしたようにダンジョンに一般人が入るように。って感じ?まあざっくり言えば邪魔すんなだけど。」
「まあ、ふふ、樹様の考えは何と無くわかりました。ではアルカードさんと白夜にはその様に伝えて3人で話合わせてみますね。」
「うんお願い。駄目マスターで悪いね。」
「いえ。駄目マスターだなんてそんな。私達は樹様に感謝してますからね?自分を卑下しないで下さい。」
「ははは。まあそう言う事で。後は任せた!。アルカードもごめんねー。」
「うむ。まあ総理には少し待って貰う事にししよう。決まった事は後で報告で良いな?。」
「僕が分かる範囲でざっとでいいよ。」
「うむ。まあやってみよう。」
「ふふ、樹様にも困ったものですね。」
「じゃ、僕はダンジョンの様子でも観て来るねー。」
こうして僕は3人に任せ……いや押し付ける事に成功した。やったぜ。
その後配下3人で総理と話し合い何とかその日は終わった。きっとこんな事が今後はちょくちょくあるだろう。優秀な配下が居て良かった。
しばらくするとアルカードとユキが戻って来た。2人にお礼を言って休んで貰おうと思ったが2人は疲れてないと言う。
「僕は少しだけで疲れたよ。」
「確かに顔が疲れているな。」
「2人は疲れてないの?」
「私は特に疲れてないですね。ほぼアルカードさんと白夜に任せていたので。」
「我もコウモリ使ってちょっと喋っただけだから疲れてないな。」
「そっか。まあ白夜には後でお礼言っておくか。」
「首相官邸まで入り込んでもらいましたからね。」
「……後でお礼と一緒にお金渡しておこう。」
「それが良いかもしれぬな。案外骨が折れたかもしれん。」
「ははは。」
「ああそうだ主、総理には部屋のコウモリを通じれば我と繋がるように伝えたが構わぬな?。」
「うん?平気だよ。考えてみれば向こうから連絡取れないのも手間だから良いよ。」
その頃首相官邸では総理と秘書が疲れ切った顔で喋って居た。
「総理、白夜と名乗る男が帰りました。」
「そうか。やはりダンジョンとは訳がわからないな。」
「何がですか?」
「いや、吸血鬼と言い吸血鬼の操るそこのコウモリと言い、そして今まで居た白夜と言い何でもありじゃないか。」
「まあダンジョンそのものが良く分かってないですから。ですがまあここまで侵入して手は出されてないので敵対する意思は無いのでは?。」
「敵対する意思は無いが敵対するならするで構わないと言った感じだったな。」
「それはまあ、そうですね。」
「しかし、他国のダンジョンは日本のダンジョンマスターとは別か……。」
「そのようですね。しかしシールドの件は事実でしょうか?」
「ふむ、一度秘密裏に試すしか無いだろう。」
「自衛隊ですか?。」
「自衛隊でも警察でも秘密裏に出来るならどちらでも構わない。しかし厄介だ、私とお前以外話した者が居ない。」
「はい。どうやって手回ししましょう?。」
「一度他の大臣や主だった者を集めよて話し合おう。」
「信じますか?。」
「信じなくともそこのコウモリを使えば良いさ。」
「それでも頭の固い者は信じそうにないですね。」
「……嫌な事を言わないでくれ。私の代で国が消えてなくなるとか嫌だぞ。」
「申し訳ありません。」
「総理、他の大臣には声を掛けましたが何人かは欠席するようです。」
「それは来れないのか?それとも来ないのか?。」
「人によっては来れないのですが、来ない方も居ます。」
「今回の内容がダンジョンの事についてなのは言ったんだな?。」
「はい。確かに言いましたが。」
「そうか。なら良い。いや良くは無いが、どうせ敵対派閥の者だろう。」
「まあ……。」
「ふん。ダンジョンと言う物が現れたこの時に重要な会議があるからと声を掛けて集まる気がハナから無いとは何を考えているんだ!。」
「総理落ち着いて下さい。廊下にまで聞こえます。」
「ああすまない。ついな、。」
管理者に脅され信じられず居た所どこからか吸血鬼が現れ脅される。そんな経験をして、なんとかここ最近やっていたのに新たに白夜が総理を訪ねて来た。しかも誰々に憑依しただの化け猫だの。
ダンジョンの者である証拠を見せると目の前で人から化け猫と言う者になった。未だに総理はここ最近の出来事が夢であったならばと何度も願ったが残念なことに夢の中などでは無かった。
それから白夜と名乗る化け猫と元から居たコウモリも使っての話し合いだった。総理からすればシールドと言うのはありがたいが、それでもダンジョンマスターの配下は地球の国を攻撃出来ると言うのは衝撃だった。
ダンジョンに入った警察や自衛隊の報告で【スキル】が外では使えないと聞いた時は、正直安堵していた。そんな物が地球で使えたら誰がどう考えてもろくでもない事に使われるのは目に見えていたからだ。だが吸血鬼の男が現れてからはもしや騙されているのでは無いか?何か仕掛けがあるのでは?と思ったがどうやら成る程、ダンジョンマスターとその配下は使えるのだ。
それらを今後の国の方針としてはダンジョンとどう向き合うか、どうダンジョンマスターと付き合っていくかを話し合おうとしているのにハナから来ない馬鹿が居る始末。総理はイライラしていた。
「まあ集まれる者達で話し合うしかないな。」
「そうですね。それしかないですね。」
次の日、集まれる者は集まったがやはりすぐには信じてもらえなかった。そこで、コウモリを通じアルカードと言う者に言った所、アルカードが現れた事により何とか信じて貰えるようになった。
まあアルカードが多少魔法を使ってみせて「我らダンジョンマスターとその配下はダンジョンの外でも【スキル】は使えるぞ?。」と多少危機感を煽っていたのだが。
新世界へようこそ。 ふぁる @shadow6370
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。新世界へようこそ。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます