第9話 クロネ姫の話

シロネ姫の女王継承式に向けて、城の中は準備が着々と整えられていた。


しかし―――。


「何で…お姉ちゃんが女王なの!?」

「(あれは…クロネとオルタナ? 何を話しているのかしら?)」


クロネの大きな声が聞こえ シロネは身を潜めた。


「シロネ様が姉姫様だからですよ」


クロネはシロネが女王になる事を反対していた。それはシロネも知っていた。


「……私――知ってるんだよ。お姉ちゃんは…このお城の人間じゃないって…本当のお姉ちゃんじゃないって事」

「(…………!!)」


私は……この城の人間じゃない?


そう…シロネは幼い頃 森の中で倒れている所をオルタナに拾われたのだ。


「……私のお姉ちゃんは病弱で 幼くして亡くなったんでしょう?」

「(……………。)」


森の中で拾われた少女(つまり今のシロネ)は 幼くして亡くなった姫(本物のシロネ)と驚くほど顔が似ていたので クロネの姉として……「シロネ姫」として育てられたのだ。


そして…シロネが特別な能力…魔法が使える事が分かった。

※因みにクロネは魔法が使えない。


「えぇ……それは私も存じ上げております。ですが、“シロネに女王を継承させたい”とご判断されたのは亡き国王様ですから……」


オルタナはクロネをなだめた。しかし―――。


「……魔法が使えるから?」

「……えっ?」

「お姉ちゃんが魔法使えるから 選ばれたんでしょう…!?」

「(………!?!?)」


私は無能力だから……!!


「クロネ様…!! それは違―――!!」

「もう良いッ…聞きたくない!!」

「クロネ様……!!」

「(クロネ……)」


どんなに宥められても、クロネは納得いかなかった…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る