第28話 秀頼 琉球に現る
空想時代小説
今までのあらすじ
天下が治まり、日の本は諸大名の元、安寧の世の中になると思われた。
朝廷より武家監察取締役に任じられた秀頼は真田大助と上田で知り合った僧兵の義慶それに影の存在である草の者の太一と元山賊の春馬を伴って諸国巡見の旅にでた。越後からは身請けをしたお糸もいっしょで、駿府からは徳川家光も同行している。
奄美から薩摩の戦船に乗って、琉球に向かう。またもや戦船の役務を負ってである。またもや丸一日で琉球の中城村(なかぐすくむら)に着いた。標高150mの高さに城が見える。見るからに攻め入るのは困難なところだ。だが、平穏な世の中になれば無用の長物である。
代官所に行き、軍船の話を聞く。琉球は薩摩の属国となっている。琉球王国は存在しているが、実質の支配者は薩摩である。よって、主要なところには代官所がおかれている。
代官の話ではひと月前にポルトガルの軍船がやってきて、大砲を一発ぶっ放していったそうだ。もちろん城までとどくわけはなく、山の中腹にあたったとのこと。要は威嚇射撃である。なぜ大砲をぶっ放したのかはよくわからない。ということだった。
気まぐれに撃ったのか、琉球の反応を見たかったのか定かではない。
そこで秀頼らは琉球王国の都、首里へむかった。
首里の旅籠に泊まると、代官所の役人がやってきて、
「ポルトガルの商人が会ってもいいと言っております。会われますか。ことばがわかる者です」
「それはぜひ会いたいものじゃ」
翌日、代官所でそのポルトガルの商人にあった。
「木下秀頼と申す。諸国をめぐって皆のくらしぶりを見ておる」
「日の本一の人とききましたが・・」
「そういうわけではないが、武家監察取締役という役目をおっている」
「それはさむらいのいちばん上ということか」
「いちおうな」
「ではおはなししましょう。ポルトガルはマニラをせいふくしようとしています。ですが、イスパニアもねらっております」
「マニラとは南の国だな」
「マニラの次は朝鮮をねらっています」
「日の本ではないのか?」
「日の本には戦船もあり、強いと思われます。朝鮮はミンにやぶれて属国となっております。ミンぜめには朝鮮がひつようです」
「それでここ琉球は?」
「ここ琉球はマニラと朝鮮の間にあり、補給基地として使えればいいと思っています」
「水と食料があればいいということだな」
「そうでござる。ポルトガルは薩摩や日の本を相手にするつもりはございませぬ。できれば交易をしたいと考えております。ただ、イスパニアはそう考えていないようです。よって日の本とポルトガルの友好関係をもちたいのですが・・」
「そういうことでござるか。そのことはわれ一人では決められぬ。琉球の王や薩摩の殿とも話し合わねばならぬ。しばしの時をもらえぬか?」
「いかほどの年月が必要か?」
「薩摩に帰ってからじゃから半年もあれば・・・」
「では、半年後、また首里にまいります。その際にご返事をお待ちしております」
「ところで先日中城でポルトガルの船が大砲を撃ったと聞いたが、それはなぜか?」
「そのことでござるか。簡単なこと、大砲の弾がどこまで届くか試したのでござる。城まで届かなかったので、それ以上撃つのは無駄だと思ったのです」
「そうか、人騒がせなことじゃ。それで、そちのことばはどこで覚えたのじゃ?」
「マニラの日の本村の者にならいました。わたしの母は日の本のおなごです」
「どおりで達者なわけだ。してお名前は?」
「ロドリゴ・ロペスと申します。またお会いしましょう」
と言って去っていった。
「家光どう思う?」
「嘘はないようですな。目は泳いでおりませんでした」
「うむ、われもそう思う」
「では、まず琉球王朝ですな」
ということで、翌日には薩摩の代官とともに琉球王朝に出向いた。
琉球政府は、ポルトガルとの交易を了承した。というより歓迎した。元々琉球は交易で成り立っている国である。近年、薩摩に支配されて富がそちらにながれてしまっているが、元々は豊かな国だったのである。今回も戦をするよりも交易の申し出であれば大歓迎というのが本音である。
秀頼は琉球王朝から薩摩への書簡を受け取り、戦船で薩摩への帰路をとった。
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