第9話 VSゴブリンエンペラー&ゴブリン(職持ち)

「———グギャッ!!」

「うわっとぉ!? こら、剣なんか振り回しちゃ……危ないでしょうが!!」


 俺はゴブリンソルジャーの剣をギリギリで避け、ボス部屋の外のゴブリンから頂戴した棍棒を、鎧に守られていない無防備な足目掛けて振るう。

 『ゴキャッッ!!』と言う骨が砕ける音と共にゴブリンソルジャーが地面に倒れるのを横目に、続け様に背後へと忍び寄っていたもう一体のゴブリンソルジャーの頭を棍棒でかち割った。


《おおおおおおおおおお!!》

《やるじゃん白星!!》

《まさかの白星がゴブリンソルジャーを一撃だと……!?》

《いや、妥当じゃね?》

《ゴブリンソルジャーのステータス平均は35くらいだから白星より弱いのか》

《いや普通に束になって掛かってこられたら白星が勝てる気しねぇんだが!?》

《逆だろww》

《それなww 白星なら狡い手で一網打尽にしそうだよなww》


「———大正解! 皆んな俺のことが分かってきたじゃないか」


 俺はゴブリンソルジャーを助けようと向かってくるゴブリン(職業持ち)共に、閃光玉———と見せかけて爆発玉をぶん投げた。


 閃光玉だと思ったらしいゴブリン共はまんまと俺の策に嵌り、目を瞑る。

 

 そんな無駄なことしても意味ないのに。


 ゴブリン達の滑稽な姿に思わず笑いそうになるが———その前に爆発した爆発玉の威力が予想外に大きくて俺までビックリする。

 爆発玉は魔力を暴走させて爆発させると言うシンプルなモノなのだが……軽く手榴弾とかよりよっぽど威力が強かった。


 爆発により、数体のゴブリン共は爆散し残りも何処かしらの部位を吹き飛ばされて死亡している。

 また、あまりの威力にボス部屋の地面が大きく抉れていた。


【———レベルが2上がりました】

 

「お、おお……いいやんこれ。比較的安いしまた買お。あ、《スキル強奪》」


【スキル———《剣術:I》《勘:I》《精力増強:I》×5を強奪しました】


「おい、ふざけんな! 殆ど雑魚スキルしか出てねぇじゃねぇか!!」


 俺は強奪したスキルに対して激怒する。

 しかし仕方ないと思う。


 こちとら常に命賭けで戦ってんだぞ。

 相手の方が常に強いし。


《乙ww》

《流石白星ww》

《これが白星クオリティー》

《どうせ精力増強が多いんだろww》

《ゴブリンの上位種なのに可哀想》

《いいスキルはあったか?》


「まあ……《剣術》と《勘》くらいだな」


 俺は爆発を恐れて動きを止めたゴブリン達を睨みながらリスナー達に言うと、コメントが物凄い速度で打たれ始めた。


《おおおおマジか!?》

《勘とか超大当たりじゃねぇか!》

《勘って《超感覚》の進化前だろ?》

《そうそう! ガチで強いぞアレ》

《そりゃ精力増強が沢山出るわけだわww》

《もう勘が当たれば全部精力増強でも文句言えんくらいだぞ》


「マジ? 《勘》ってそんなに凄い? まぁ確かに何か変な感じはするけど……」


 何か……何となく次にゴブリンエンペラーが斧投げて来そ———


「———うぉおおおおおおお!?!?」


 俺の勘通りに、ゴブリンエンペラーが本当に斧を投げて来た。

 咄嗟に避けると、斧は後方にいたゴブリンウィザードを突き抜けて壁に食い込む。


 パラパラと壁の破片が地面に落ちる光景を見て……思わず呟いた。


「……俺、凄くね……?」


《凄げぇ!!》

《神回避過ぎるww》

《これが勘スキルの力か……》

《チートで草》

《まあ当たり外れあるからチートとは言えんけどな》


「イケる……これならイケるぞ……!! とりま雑魚は引っ込んでろ!!」


 俺は亜空間ポーチから素早く爆発玉を取り出してゴブリン共に投げる。

 同時に轟音と共にボス部屋を揺るがす程の爆発が発生。

 爆発は周りのゴブリンを巻き込んで消えていった。


 俺は再びレベルアップのアナウンスを聞きながら、短剣を持ち……遂にゴブリンエンペラーと対峙する。

 ゴブリンエンペラーもいつの間にか手元に戻っていた斧を手に、鼻息荒く此方の様子を伺っていた。



 ———動いたのは同時だった。



「グァァアアアア———ッッ!!」

「閃光玉———ッッ!!」


 ゴブリンエンペラーは斧を肩に乗せて物凄い速度で一直線に俺へと向かってくる。

 対する俺は、手に閃光玉を持って全力でぶん投げていた。


 しかし———閃光玉が炸裂する前にゴブリンエンペラーの一閃によって真っ二つに両断され、光ることなく壁にのめり込んだ。

 

「……ガァアアアアアア……」

「…………うそん」


 フシュー……と息を吐き出すゴブリンエンペラー。

 その瞳は燃える様に真っ赤に染まり、仲間を殺されたことで暴走状態に入っていることが容易に伺えた。

 もはや今のアイツに閃光玉は通用しない。



「グォオオオオガァアアア———ッッ!!」

「ぐ……この———クソチート野郎め!!」


 

 俺は短剣片手に、爆発玉を投げながら半泣きでゴブリンエンペラーへと突撃した。


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 人気が出れば1日2話上がるかも。  


 

 

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