第7話 変異ボス

「———あー、やっと居なくなった……アイツら頭おかしいだろ……モンスターに言うことではないかもだけどさ……」


【レベルが2上がりました】


 俺はボス部屋の前で半ば崩れ落ちる様な形で地面に座った。

 口から自然と愚痴が漏れるが、正直愚痴くらい漏らしたくもなる。


 何せ———3時間もの間、ひたすらにゴブリンと対峙していたのだから。


《おつかれ白星》

《マジでお疲れさん》

《お前凄いよ》

《始めは魔王に見えたけど、途中からは大変そうだったな》

《ゴブリン476匹討伐おめでとう》

《全部数えてる奴居るんだけどww》

《そんなに相手して白星よく死ななかったなww》

《まあアイテムのお陰だろ》

《いや、狡い白星の戦法が生きたんだろ》

《俺は白星の狡い戦法だと思うな》

《俺も》


「お前ら狡い狡い五月蝿いわ! もう少し素直に褒められないのか!?」


 俺はあまりにも『狡い狡い』と言われるので、我慢の限界を迎え、約70,000人のリスナーに向けて言い放つ。


 こちとら必死こいて数多のゴブリンと戦ったと言うのに、あまりにも酷くない?

 正直始めは腹いせができて楽しかったけどさ、途中からは地獄だぞ。


 アイテムのストックのことを考えて途中は短剣で特攻したり、ドローンを盾にして遠距離攻撃を何とか防いだり、などなど。

 完全に途中からはアイテムもそうだが、殆ど全てのモノを使って戦った。


 それはそれは大変な戦いだった。


「お前らひど過ぎだろ。俺はステータスオール5のゴブリンの3分の1程度の雑魚だぞ。頑張っただろ、もっと褒めろよ! 戦ってる時ずっと死んだ婆ちゃんの顔が見えてたんだぞ!」


 俺がそう言った途端———。


《レオナch:【50000円】》

《レオナch:【50000円】》

《レオナch:【50000円】よく頑張ったな》

《唯:【50000円】お兄ちゃん、やっぱり次は一緒に行っても良い?》

《唯:【50000円】心配なんだけど》

《刺激が欲しい奴:【50000円】俺は白星を応援しているぞ! 流石っす、白星さん!》

《ダンジョン評論家:【50000円】とても合理的な攻略方法だと思います。僕は貴方を尊敬します》


「いや、極端過ぎない? 確かに褒めろとは言ったけどさ……限界スパはヤバいって! 運営さん、どうか垢BANはやめて下さい! ただ普通に褒めて欲しかっただけなんです!」


 俺は全ての配信を監視している配信元の企業に向けて土下座をする。

 これで垢BANでもされたらとうとう妹のヒモになってしまうかもしれない。


《必死過ぎだろww》

《まあスパチャくれくれしたらBANされるもんな》

《レオナ様ガチ勢:【50000円】貴方の戦い方と執念にとても感動しました! これからも頑張ってください!》

《また来たぜww》

《たった数分で40万円稼いでやがるww》

《まあそれ以上にアイテム使ってたけどな》

《あ、確かに》

《プラマイマイナスってことか》

《可哀想に》

 

「やめろ言うな、考えない様にしてるんだ」


《現実逃避で草》

《ざっと60万くらいは余裕で使ってんじゃないか?》

《60万……だと……!?》

《俺の月給より余裕で高くて草》

《60万も月給貰える奴中々居ないだろ》

《ハンターならC級以上になれば100万稼げるぞ、多分》


「よし、もうボス行くか!」


 俺はこれ以上コメント欄を見ない様に目を背けながらボス部屋の扉を開けて……。



「———グォオオオオオオ———ッッ!!」



 …………。


「よし、閉めるか」


 俺はドス黒い体色の5メートル級のゴブリンの様なモンスターの姿を見て、そっと扉を閉めた。


「———おい、どう言うことだよ、アレってゴブリンエンペラーだよな!? レベル50くらいのゴブリンエンペラーだよな!? ねぇ何で俺ってこんなに運が悪いの!?」

 

《うん、ゴブリンエンペラーだね》

《諦めな白星》

《アイツは無理だ》

《運なさすぎな》

《おつかれさん、白星》

《変異ボスで草》


 草じゃねぇよ馬鹿野郎。


 俺は心の底から自分の運の無さを呪った。


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 人気が出れば1日2話上がるかも。 

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