第5話 妹

「…………えぐ」


 初配信を終えた次の日。

 朝起きた俺はスマホを目に穴が開くほどガン見していた。


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白星(雑魚)

チャンネル登録者数:11.4万人・1本の動画

雑魚がダンジョン配信します。

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 そう———自分のチャンネルである。


 昨日の配信時には清々しい『0』が書いてあったと言うのに、今では『11.4』の数字。

 昨日の11.4万倍の数字が俺のチャンネルに書いてあった。


「……もう訳が分からんわ」


 因みに昨日の配信は既に60万回再生を突破している。

 配信でこれほどの再生数というのは中々凄いのではないだろうか。


 更には、某アルファベットのSNSでは日本トレンド1位入りを果たし、既に俺を切り抜きも上がっているらしい。


「……ふっ、ま、まあ俺に掛かればこんなも———」


 俺が震えながら1人調子に乗っていると、突然俺のスマホがけたたましく鳴り始める。

 どうやら電話の様で、その相手を見てスルーが出来ないことを瞬時に悟ると電話に出た。


「も、もしも———」

『何やってんのお兄ちゃんッッ!! あれだけ私、ダンジョンに入るなって言ってたよね? まさか忘れたとか言わないよね?』


 そう言って鼓膜が破れそうな程の声量で電話してきたのは———俺の妹であるゆい


 唯は配信者はやっていないが、A級ハンターで、俺なんかとは比べるまでも無く圧倒的に強い。 

 その強さ故に、次期S級に1番近いとか何とか言われているらしい。


 まあ唯の初期ステータスが平均45だったのを考えると当たり前か。 

 俺の25倍くらいあるのよね。


 そして、そんなめちゃ強の妹は兄離れが未だ出来ていなく、こうして俺が危ない事をすると直ぐに電話してくるのだ。

 昔見たアニメの影響で妹に優しくし過ぎたせいかもしれない。


『今何考えた?』

「いや、相変わらずお兄ちゃんLOVEだなって思っただけ———」

『知ってるなら危ない事しないでくれる? 私さっき知って心臓飛び出そうになったんだけど?』

「…………大変申し訳ありません……」


 俺は電話越しに謝罪と共に頭を下げる。


 これに関してはもう謝るしかない。

 心配掛けたのは事実だし。

 まあ配信を続けることだけは辞めないが。


「でも配信は辞めないぞ、妹よ」

『……なら私も付いていく』

「だめ」

『何で?』

「だって唯、強過ぎるんだもん」

『むぅぅぅぅ……』


 見てなくても、唯が頬を膨らましてむくれているのが容易に想像出来る。

 まあ何を言われても連れて行きもしないんだが。


『———なら、今日ここ来て』

「あ、ちょっ」


 俺が何か言う前に、電話がブツッと切られ、何やら俺に送られてきた。

 

「……ショッピングモール……?」


 何かよく分からんが、ここに行かなければならないらしい。

 唯との約束破ると面倒なので、仕方なくその呼び出しされた場所へと向かうことにした。









「———遅い!」

「ひでぇなオイ!? こちとらあの時起きたばっかりなんだぞ!?」


 ショッピングモールに向かうと既に唯が待っていた。


 唯は俺と同じ黒髪黒目だが、俺とは違って、顔がめっちゃ良い。

 それはもう高校生のくせに凄え美人。

 まあ胸が無いことを除けば完璧美少女と言えるだろう。


「知らないよそんなこと。それで、どう、お兄ちゃん?」


 唯がふわっと真っ白なワンピースをはためかせながら笑みを浮かべる。


 兄との買い物だと言うのに、随分と気合の入ったファッションだこと。

 今なら20だと言われても思わず頷いてしまいそうな程大人っぽい。


「うん、さすが唯だ。ベリーキュート」

「む、何か子供をあやす様な言い方……」

「そ、そんなわけ無いだろ……?」


 ジト目で見られたのでスッと目を逸らす。

 本当に子供をあやす様な感じで言ったとはとても言えない。


 唯は数秒間ジッと俺を見ていたが、諦めたのか溜め息を1つ吐いた後、俺に腕を絡ませた。


「さぁ、しゅっぱーつ!」

「いや、待て。お前花のJKだよな? 外ではブラコン隠せよ」

「嫌だ。最近全く会えてないもん。こう言う時くらいお兄ちゃんに甘える」

「だめだこりゃ」


 俺が一向に離れようとしない唯に溜め息を吐いていると———20代辺りだと思われるショッピングモールに居る何人もの若者達が俺達を見ていることに気付く。


「なぁ、アレって『雷剣』の唯だよな? その横は……まさか白星か?」

「『雷剣』は知ってるけど、誰だよ白星って?」

「はぁああああああああ!? お前しらねぇの!? 昨日めちゃくちゃ雑魚いくせにレベルが20以上上のオークエリートに姑息な手で勝った白星さんだぞ!?」


 説明ありがとう、名も知らぬ若者よ。

 ただ、それって褒めてるのか貶してるのかどちらなのかな?

 恐らく貶しているよね?


 俺が内心笑み(怒り)を浮かべていると、その若者の声が大きかったせいで、俺達に更なる注目が集まった。

 流石の唯も、大勢の視線に晒されて自分が注目されているのに気付いた模様。


「お、お兄ちゃん、何でこんなに見られてるの?」

「え、お兄ちゃんが昨日めちゃくちゃバズったからに決まってんだろ」

「やっぱりお兄ちゃんと一緒に住めばよかったかもしれない」


 俺達がそんな会話をしていると、俺達に注目していた若者達が一斉に驚いて声を上げた。


「ら、『雷剣』の唯と白星さんが———」

「「「「「「「「兄妹だってぇえええええええええええええ!?」」」」」」」」


 そんな若者達を見ながら……。


「うわぁ、皆んな息ぴったりだなぁ」

「ふざけないでお兄ちゃん」

 

 俺達は呑気に会話をしていた。


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 人気が出れば1日2話上がるかも。 

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