第3話 2階層に突入や!

「———あ、あぶね、忘れるとこだった」


 休憩に入って数分。

 俺はすっかりやらねばならぬことを忘れていたことを思い出す。


《どしたん?》

《何か忘れ物か?》

《常識は既に忘れてるけどな》

《それなww》


「お前らさ……ほんとに俺を何だと思ってんの? 一応今日が初配信やぞ、俺」


 俺を頭おかしいとかサイコパスとか化け物とか好き勝手言いやがって。

 そんなの言ったらC級ハンターとかの方がよっぽど化け物染みてるだろ。


《いや、F級の基準の10よりステータスが低いくせにD級レベルのステータス平均30は超えてるオークエリート倒した奴がよく言うよ》

《今までの配信者では見たことないくらい狡い戦い方でな》

《下剋上あんまり意味なかったしな》

《斧の時だけだろ?》

《投げた時も》


「いや、他の配信見てたらB級とかA級とか当たり前だろ? それに比べたらオークエリートとか雑魚もいい所だけど……」


《戦い方が誰よりも危ういんだよ!》

《観てるこっちの方が怖いわ!!》

《何度救援の電話掛けようとしたことか!》


「その節は誠にありがとうございます。それじゃあそんな皆んなに、少しいいモノを見せて上げようじゃないか」


 俺はオークエリートの死体へと近付く。

 コメント欄では困惑のコメントが数多く書かれていたが、何人かの鋭いリスナーは俺がやろうとしていることに気付いた様だ。


 オークエリートの死体。

 本来ならば俺の様な雑魚には倒せるはずもないモンスターだが、まあ頭脳戦で俺が勝ったと言うことで……。


「じゃあありがたく使わせて貰うぜ———《スキル強奪》ッ!!」


 俺がオークエリートの死体に触れてスキルを発動させると、オークエリートの身体が光り輝き始める。

 そして段々光と共に死体が消滅していくと、俺の頭の中でとある声が聞こえた。


【スキル———《筋力増強:I》を強奪しました】


「よし、良いやつじゃん!」


 俺は思わずガッツポーズを決める。

 オークエリートの中で1番使えるスキルだったので、マジで良かった。

 これが《精力増強》とかだったら殺してたかも知んない。


《おい、何のスキル手に入れたんだ?》

《ステータスプリーズ!》

《スキル強奪ってどう言うスキルなん?》

《大分強そうだけど》

《まあ経験値半減とか言うハズレスキルも持ってんだしプラマイゼロじゃね?》

《いいからステータス見せてくれ!》


「待てって、今から取り出すから」


 俺はリスナー達に急かされてポケットからステータスボードを取り出した。


—————————————

【名前】白星直斗

【種族】人間(雑魚乙)

【年齢】18

【Level】5↑

【体力】4↑

【魔力】4↑

【攻撃】4↑

【防御】4↑

【敏捷】4↑

【スキル】

《下剋上:I》《スキル強奪:I》

《経験値半減:Ⅴ》

【強奪スキル】

《筋力増強:I》

—————————————


「———弱くね!? レベル4つ上がってスタータスオール2しか上がってねぇの!?」


 俺は自分のステータスボードを見て驚愕も驚愕。


 あれだけ必死こいて20レベル以上の格上と戦ってたったの5しか上がっていないだけじゃなく、まさかのステータスはオール2しか上がらないとか言う雑魚仕様には、流石の俺も泣きそうだわ。


《ガチで雑魚乙ww》

《お前すげえよ》

《その才能の無さで配信するとか白星……お前神かよ》

《俺は尊敬するね》

《見る感じ1つレベルが上がったら3つか2つのステータスが1上がったんだろうな》

《ならあと100くらいレベル上げたらやっとB級最下位くらい?》

《長い道のり過ぎで草》


「ま、まあ『下剋上』使えばめちゃくちゃ強くなるからいいし? 例え連続使用したら前回の倍率の半分になるとか言うデメリットあっても余裕だし?」


 俺が視線を右往左往させる。

 本当は全然余裕じゃないに決まってんだろうが。


 だが、俺の分かりやすい見栄はリスナーには全く効かなかったようだ。


《なら実質的にさっきと強さ全く変わってねぇじゃん》

《それな》

《おいおい大丈夫か!?》

《やだよ白星死ぬの》

《折角刺激のある配信者現れたんだから死なないでくれよ!?》

《名無し:【30,000円】これで良い武器か装備の足しにしてくれ……》


「ありがとう、《名無し》さん! これで閃光玉10セット、合計50個買わせてもらうわ」


《閃光玉かよww》

《閃光玉ww》

《好きだな閃光玉ww》

《他に買うもんあるだろww》

《10セットもいらねぇww》

 

「おい、閃光玉先生を舐めんなよ! 閃光玉は凄いんだぞ! 見とけよ、2階層でも絶対に閃光玉先生を使うからな!」


 俺はリスナーに閃光玉の有能性を示すため、先程の疲れや恐怖を忘れて意気揚々と2階層への階段に足を踏み入れた。











 ———2階層。


 同じダンジョンだし等級も低いので、案の定再び洞窟のステージだった。

 しかし1階層と違うのは———。


「くたばれッ———《閃光玉5連投》!!」

「「「「「グギャギャギャ!?」」」」」


 ———雑魚モンスターのキングオブキングであり、レベル5程度のゴブリンが多いと言う点だ。


 因みにコイツらに《下剋上》は使えない。

 レベルが同じだからだ。

 と言うか、そもそも《下剋上》は相手とのレベル差が10以上無いと使えないと言う致命的な欠陥を持ち合わせている。


 そんな中、普通のレベル1の人にも満たない俺のステータスで、ステータス平均12のゴブリンを複数相手にしなければならない。


 とすると……自ずと答えは1つに搾られるわけだ。


「《筋力増強》で1番コスパいい閃光玉を投げるしかないんだ、クソッタレがよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」


《切実で草》

《まあ基本アイテムって使い捨てだもんな》

《雑魚モンゴブリンにすらスペックで勝てない白星……哀れ過ぎる》

《筋力増強無いと詰んでたよな》

《マジそれな》

《てか、そんなにポンポン閃光玉多用してえ大丈夫なのか?ww》


 俺はリスナーの言葉に、閃光玉を投げて無限に湧き続けるゴブリンに強く頷く。


「大丈夫に決まってんだろ! これでも沢山持って来……あ、ちょっ、やばい、もう在庫が尽き———あ、尽きた……」


 俺は自らの鞄の中がすっからかんなのを確認して……回れ右ダッシュ。


「やばい死ぬってぇええええええええ!!」


《ww》

《流石白星ww》

《期待を裏切らない男ww》

《【悲報】配信者、ゴブリンにやられる》

《ゴブリンから逃げ出す奴初めて見たんだがww》

《オークエリートに勝った男がゴブリンから逃げ出すってww》

《面白すぎるww》


 全力でゴブリンから逃げ出した。


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 人気が出れば1日2話上がるかも。 

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