第6話 『 青年 』

 はい 、決心したんです、今日。グリーンになろうって。政府から援助も出るらしいし、やつばり地球のことを考えると、そっちの方がいいなと思うんです。


 ええ、親には話しました。やっぱり反対されましたよ。でも、何のかんの云って結局向こうが折れましたけどね。父は公務員なんですよ。僕がグリーンになると父の方もいろいろ都合が良いらしいんです。これも親孝行ですよね。恋人?今はいませんね。少し前に別れたんです。でも今度の事とは話は別ですよ。僕、前から 「いつか自分はグリーンになるんだ」 ってどこか決めてたとこ、ありますから。


 グリーンの良さですか?改めて聞かれると考えちゃいますね。まずはご飯食べないでも生きていけるところですよね。フォトシンセすればいいわけでしょう。

 ちょっと楽しみだな。でもまさか自分が学校の授業で習ってた光合成をする立場になるとは思いませんでしたね。半分植物になるわけですから。以前『草食系男子』 って言葉あったでしょう?やさ男って意味で。でももう使えませんよね。だってそれ、捕食する異常犯罪者ってことになっちゃいますから。笑えませんよ。

体色のことですか?これは仕方ありませんよね。…でも、正直これだけはちょっと悩んだんです。本当ですよ。母親も言ってたなあ。「あんたがグリーンになったら、母さんしよっちゅうあんたの身体の心配しなきゃならない」 って。分かります?つまりほら、顔色が悪くなっちゃうってことでしよう。まあ、そう言われてみればそうなんでしようけど。


 ええ、資料は読まされました。かなりの量でしたね。あんなに本とかビデオを見たのは生まれて以来じゃないかな。自分でも勉強しましたしね。やつばり自分のことですから。見るのもしんどい映像もあったな。ほら、反グリーン団体の活動なんか、ちょっとショックですよね。だってグリーンも同じ人間なのに。やつばり肌の色が違うことってそんなに大きいことなんですかね。僕、日本人で良かったですよ。

 え?ああ、フォカス (力) のことですか。僕にも分かりません。親類にもグリーンは今のところいませんから。でも父が言ってました。「結局は血で決まるんだから」 って。それから 「お前がグリーンになっても、俺たちは何にも変わらないんだから」 って。

 僕もそう思います。グリーンになって、多分いろんなことが起こるかも知れないけど、僕はやつばり僕なんですから。それを決めたのも含めてもね。


 今日は有難うございました。 おかげで少し頭の中がまとまった気がします。また会えるといいですね。今度は実際「グリーンになった気持ち」についてでもお話ししますよ。

 ええ、約束ですよ…。

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