第2話 『 光のシャワー 』

 目の前に例の奴がいる。 そう、グリーンだ。 とはいっても実際自分の目で見るのは初めてで、自然興味は惹かれる。

 相手は べンチに腰掛け、熱心にパソコンで書き物をしている様子。先ほど一瞬目が合った。 本当だ。 明らかに異様な顔色。周りの連中が気味悪がるのも無理はない。 しかし一方で私は自分の中に彼らが何故グリーンと呼称されるのか、 別の感慨が沸き起こるのを感じ取っている。

 今日は曇り。 しかし肌寒さはない。 小春日和と言ってもいいだろう。グリーンは黒地にストライプの入ったジャンバーを羽織っている。 どうやら学生らしい。年格好より落ち着いた印象はその特異な印象に依るだけではないだろう。

 今、また目が合った。 私があまりに見るので気を悪くしたのか?私は困惑する。すると相手は予想外に立ち上がって空を仰ぐ。そして次の瞬間、彼の頭上に雲間から日差しが差し込んできた。私は思わず目を見張った。オーラ・シャワーだ。私はしばし茫然と、その光景を見守るしかない 。

 彼は少し目を閉じ気味に空へ顔を向けたまま、その体は輪郭が淡い光を放っている。 まもなく彼の表情は浮き立つような光彩をたたえ、 その光景に私だけではなく周囲の者たちもいつの間にか目を奪われているようだ。オーラ・シャワー。よく言ったものだ。私は見知らぬ「命名」者に感心する。そうか、グリーンたちはこうやって自らの糧を得るのか。私は翻って自分がひどく不器用な存在に思えてくる。俺たちは毎日旨くもないものを口の中に放り込み、その金欲しさにこうやって地べたを這いつくばって生きているというのに。

 気づくと周りの者はとっくにそれぞれの動きに戻っている。 まるで 「自分はちょっと気になっただけで、別にグリーンのことなど気にも留めていない」 とでも言うかのように。グリーン本人も今は落ち着き (?) を取り戻し、 本来の作業に集中している。 そう、それがきっと彼の日常なのだ、多分。

 私はふと街頭ディスプレイを見上げ、流れているニュース映像に目をやる。そこには過分に加工され、切り取られた現実がまことしやかに映し出されている。

 さあ、そろそろ私の昼休みも終わりだ。

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