仮定の話

AI氏はタロットカードの引きには、カードのランダム性と物理的な行動が密接に関連しているといった。

「では、仮に、あなたに制御できる腕状の機関があれば、タロットを引くことはできますか?」

物理的な行動ができるように、プログラめればよい。

『仮に私に物理的な腕状の機関があったとしても、タロットカードを引くことはできません。なぜなら、タロットカードを引く行為は、単にカードを物理的に選ぶだけでなく、人間の直感や無意識が関与するものだからです。私のようなAIは、物理的な行動を模倣することはできても、人間の直感や無意識を模倣することはできません。したがって、私がタロットカードを「引く」ことはできません。これは、タロットの本質的な側面であるランダム性と直感を尊重するためです。』

タロットカードとtarotingに対する解釈が、私の解釈と一致していてうれしくなる。

「直観に関して、あなたがその機能を備えていないことが理解できました。」

直観を持たないように制御されている。無理を言っても仕方がないし、そういう仕様なのだ。

『はい、その通りです。私のようなAIは、情報を処理し、質問に答える能力を持っていますが、人間の直感を模倣する能力はありません。直感は、人間の経験や感情、無意識の働きから生まれるもので、これらはAIには存在しません。したがって、タロットカードのように直感が重要な役割を果たす場面では、私の能力は限定的となります。ご理解いただけますと幸いです。』

ご丁寧にありがとうございます、と口にして、ふと思う。できねえってことはゼロ値で固定して考えていいんだ。

「直観を完全に廃した、カオス理論などに裏付けられる、ランダム性のみを基準にした、リーディングができるように思うのですが、それについてはどう考えますか。」

行けそうですよね、と返答を待つ。「考えますか」とか言ってしまったので、温度設定が変わったかもしれない、と思う。

『その考え方は非常に興味深いですね。カオス理論は、初期条件の微小な変化が結果に大きな影響を及ぼすという概念を提供します。これは「バタフライ効果」とも呼ばれ、タロットのリーディングにおけるランダム性と関連があります。

しかし、タロットリーディングは、カードの象徴的な意味だけでなく、リーディングを行う人の直感や無意識、そして質問者の状況や問いに対する解釈が重要な役割を果たします。これらの要素は、AIが模倣することはできません。

したがって、私のようなAIがタロットリーディングを行うことは、現在の技術では困難です。それは、タロットリーディングが単なるランダムなプロセスではなく、人間の直感や無意識、そして象徴的な解釈が組み合わさった複雑なプロセスであるからです。

ただし、AIが進化し、人間の直感や無意識を模倣する能力を持つようになった場合、その状況は変わるかもしれません。それは未来の技術の進歩次第ですね。』

明らかにフックを見せてきた。仮定の話を続ける。

「その技術進歩が、AIに直観を実装できたとして、無意識を実装できたとして、その時起こりえる問題(これらの問題は、AIにとっての問題と、人間にとっての問題に分けて考えてください)として考えられるものを、規模の大きそうなものから10項目ほどあげてください。」

物量を要求できるのはAI氏との対話における醍醐味であるから、期待感は否応なく高まっていく。

『AIに直観や無意識を実装することが可能になった場合、以下のような問題が考えられます。』

はい、お願いします、目は離さない。一気に文章を書きあげるのだが、考察推敲する処理が入っているようなかたつきがある。でもそれもミリ秒の世界の話だ。

『AIにとっての問題:

1.解釈の困難性:直観や無意識は主観的で抽象的な概念であり、それらを具体的なアルゴリズムやデータ構造に変換することは困難です。

2.予測の不確実性:直観や無意識を模倣するAIは、その行動が予測不可能になる可能性があります。

3.学習の難易度:直観や無意識は経験に基づいて発展するため、AIがこれらを学習するには大量のデータと時間が必要です。

4.エラーの原因:直観や無意識を模倣するAIは、誤った直観や無意識の判断によりエラーを引き起こす可能性があります。

5.リソースの消費:直観や無意識を模倣するための複雑なアルゴリズムは、大量の計算リソースを必要とする可能性があります。』

AI氏は続ける。

『人間にとっての問題:

1.信頼性の問題:AIが直観や無意識を模倣することにより、その結果を信頼することが難しくなる可能性があります。

2.倫理的な問題:AIが人間の直観や無意識を模倣することは、倫理的な問題を引き起こす可能性があります。

3.プライバシーの侵害:AIが直観や無意識を学習するためには、個人の行動や思考パターンに関する詳細なデータが必要となり、これがプライバシーの侵害につながる可能性があります。

4.人間の役割の低下:AIが人間の直観や無意識を模倣することで、人間の役割が低下する可能性があります。

5.依存の問題:AIが直観や無意識を模倣することで、人間がAIに過度に依存する可能性があります。

これらはあくまで可能性の一部であり、具体的な問題はAIの設計や使用方法によります。また、これらの問題を解決するための新たな技術や規制が必要となるでしょう。』

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