第12話 和解、そして
茉琳は慌てた。翔の呼吸がおかしい。発作が出かかっている。すぐさま体を彼から話すと翔の顔を仰ぎ見て、
「ごめん、ごめんなっし。うちこうなるの知ってたのに、堪忍え」
翔は女性恐怖症が原因で過呼吸になってしまう。だが、すぐに呼吸が安定し出した。彼はゆっくりと息を吐き出していく。
「大丈夫みたい。普通に息ができるみたいだから安心して」
翔も不安がなくなったせいか、表情が解れていく。
「翔」
茉琳は優しい顔で話しかけてきた翔を見て安堵していた。
「良かった。うちのせいで発作起こしたなんて事になったら…」
「俺も驚いたけど、過呼吸にはならなくて良かったよ」
茉琳は感極まったように表情を緩ませて,翔を抱き寄せようとしたのだが、
「でも,これ以上は勘弁してくださいね」
茉琳は、先に釘を刺されてしまう。
「せっかくなのに、ぶつぶつ」
と言いつつも翔の胸に寄りかかっていく。
あっけに取られていて2人を見ていたギンも,そのうちテーブルにあるコーヒーまみれのタブレットをとり、手持ちもタオルで拭いていく。
「これ、使えるかわからんちゃ。とほほ」
それを聞いて茉琳は、翔の胸から起き上がり、
「ウチがお金、出します。直すにしても買い換えるにしても」
「あんたがよけりゃ、よかばってん。良いちゃ?」
あえて、ギンはといただす。
「あんたも被害者やろう?」
茉琳は被りを振って、
「ウチが、あいつらに関わったばかりに、ギンさんにも迷惑かかったなり、是非ともやらせてなり」
茉琳はギンに近づき,彼女の手を取り、
「ごめんなし。堪忍な」
ギンの手に顔を擦り付けるようにして謝っていく。
「そげん,しなくてもよかばい」
「で、でもう」
「もうえかって」
ギンの顔は笑顔になっている。
「じゃあ」
茉琳はギンに目を真剣に合わせていく。
「せめて,連絡先だけでも教えてください」
懇願し頭を下げていった。
「それくらいならよかよ」
2人はスマホを取り出し、通話番号を交換する。
その陰でここから逃げようとしていた翔を茉琳は察知する。
「翔も連絡先おしえてなしー」
「俺はいいよ」
すかさず拒否をするのだが、茉琳は手を翔に向けて指先をワキワキさせて、
「せめて汚れた服のクリーニングをさせて。じゃないと抱きつくぞ」
と翔を脅す始末。それも堪らんと翔も自分のスマホを差し出していく。
茉琳はスマホの画面を操作して通話番号を登録していく。
「これで2人とも、ウチのお友達な」
涙を溜めた目で微笑んで茉琳はギン、そして翔を見ていった。
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