新しい仲間候補!動き出す神の子の気配!

 翌日からシオン達はイグニールのガイドの元、順調に王都への道のりを進み、あと半日ほど歩けば王都という距離に差し掛かった時、「助けてー!」という大きな叫び声を耳にした。


「ご主人様、そろそろ王都に着きます。」


 紆余曲折あり、結果イグニールもシオンをそう呼ぶことになった。


「わかった。前の町は刺激が足りなかったから、ここには期待したいなぁ。そうだ!」


 シオンは面白いことを閃いたとばかりに言う。


「ミカとエル二人で俺を楽しませる企画をやってもらおうかな。ずばり、王都滞在中にいつでもいいから魔物を指揮して攻め込み、どこまで攻め込めるか。いいね?」


 常人ならばこんなことありえない。だが、神シオンの二人の天使はやるのだ。二人はシオン以外のことを少しも考えない。


「お任せください!」


「期待していて!」


「二人が攻めだしたとき、俺はイグニールに乗って上にいるから精いっぱいやってね。でも二人が戦っちゃだめだよ?あくまでも指揮だからね?」


「はい。」


「わかってるわ。」


「楽しみもできたし、さっさと行こうか。」


  そう言って歩き出したとき、「助けてー!」と叫ぶ女の声が再び聞こえた。


「どうなさいますか?」


 イグニールが判断を仰ぐ。


「面白そうだから行ってみようか。」


「かしこまりました。では、こちらに。」


 少し急ぎ足で声のした方に行くと少女が、肌が緑色の人型の魔物に囲まれていた。ファンタジーの定番、ゴブリンである。


「おっあれがゴブリン!この世界に来て初めての魔物だね。」


 目の前で少女が襲われそうなのに誰のまだ助けに動かない。シオンの指示を待っているのだ。


「初魔物は自分で倒そうかな。」


「頑張って!ご主人様!」


「頑張ってください!ご主人様!」


 すかさず二人から応援がくる。イグニールはまだこのパターンに反応できなかった。ミカとエルは些細なことでも応援を欠かさず、なんでも褒める。


「うん!頑張るよ。(大地魔法・地の合掌)」


 三体のゴブリンの両端に大地から砂鉄でできた大きな手が出来上がり、ゴブリンを押しつぶすように動く。ゴブリンたちは何の抵抗もできずにはじけ飛んだ。そして、カンっと鉄同士がぶつかる音がした。少女はポカンとしながらしゃがみこんでいた。


「どうだった?」


 シオンが3人に尋ねる。今度はイグニールも遅れずに言った。


「「「さすがご主人様です!」」」


 一通りシオンを褒めた後、少女の元に行く。少女は近づいてきた4人の人たちをぼーっと見つめた後、急に立ち上がって深く頭を下げた。


「あ、ありがとうございました!」


「かまわない。」


 ここはイグニールが対応した。冒険者ギルドの時は興奮していたシオンが受付とも話したりしていたが、基本的にはミカ、エル、イグニールが普段の会話を対応している。ちなみに今は三人が中心のシオンを囲っている形だ。


「きれい…。はっすみません!」


 今シオン一行はフードを下ろしている。これもシオンの発案だ。言い分としてはフードをかぶっていると皆の顔が見にくいからだそうだ。この発言にはミカ、エルはいちころだった。


「あぁ。それで、大丈夫だったか?」


「はい!おかげで助かりました。」


「こんなところに一人で何をしていたんだ?」


 少女は少しうつむく。


「実は私新人サポーターなのですが、どのパーティーの方にも雇ってもらえず。仕方なく簡単な薬草採取で生活費を稼ごうとしていました。それで夢中で採っていたら囲まれてしまっていて…。」


 サポーターとはその名の通り冒険者の補助の仕事だ。


「それで今に至る。というわけか。」


 様子を見ていたエルがふいにシオンの耳元でささやく。


「この子面白い魔法適正を持っているわよ。」


 すかさずシオンは(スキル・真実の瞳)を発動する。そして、ニヤリと笑う。彼女が持っていた魔法適正がこれだ。


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名称:調節魔法


効果:あらゆる無機物と一部の有機物のサイズを調節できる。また自らの指定した範囲5m以内の事象についても調節可能。しかし、調節幅に関しては熟練度次第。


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「この子欲しいな…。」


 小さくつぶやいた。すると今度はミカがイグニールの耳元で何かを言った。イグニールそれに頷き少女に提案をする。


「きみ、もしよかったら私たちのパーティーと契約しないか?」


「わたし新人だけどいいのですか?」


「そういう意味では私たちも新人冒険者に近い。それで、どうする?」


「ぜひお願いします!私はティアと言います。」


「私はイグニールだ。」


「私はエルよ。」


「私はミカ。」


 ほぁと三人の美貌にティアは圧倒されていた。ミカが最後に声をかける。


「そして、こちらが、我々の主人であるシオン様だ。」


 シオンが一歩前に出る。


「とりあえず王都にいる期間よろしく。」


 自分よりも小さな少年に手を差し出され、握手をする。


「は、はい!よろしくお願いします!」


 ティアはシオンがとても偉い人なのだろうと考え、年下のシオンに対して礼儀を尽くした。


「ところで君はどのくらいのものを運べるの?」


「私は調節魔法という希少魔法の適性がありまして、ものを小さくして持ち運びます。それでどのぐらい小さくできるかなのですが…。」


 ティナが少しうつむき言う。


「だいたい一回りくらいサイズを変えられます…。」


 ティナはこれを話すと契約を解消されるかもと考えていたのだが予想とは違う反応が返ってきた。


「すごいね!調節魔法!やっぱり契約してよかったよ。」


 ティナは驚く。自分の魔法は希少魔法でありながら馬鹿にされてきた。王都に来てから初めて褒められた相手がシオンだった。目に涙が浮かぶ。


「ありがとうございます。精いっぱい皆さんのために頑張ります!」


 この人たちの役に立てるように頑張ろうとティナは決意した。

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